YHC、引っ越し新規受注中止 過大請求 従業員が約款を誤認 再発防止後サービス再開
物流企業
2018/09/06 0:00
法人向け引越サービスで代金の過大請求があったことを踏まえ、ヤマトホームコンビニエンス(YHC、和田誠社長、東京都中央区)は、全ての引越サービスで新規受注を中止する。ヤマトホールディングスの山内雅喜社長が8月31日、記者会見し、再発防止策とともに今後の対応を発表した。同日、国土交通省に提出した調査委員会の調査報告書によると、過大請求は「商品設計が不十分で、運用が難しいまま販売した」「従業員への教育が不十分で、商品の約款について誤った理解が蔓延(まんえん)していた」ことなどが要因。今後、再発防止策が機能し始めたと認められた段階で、サービスを再開する。(辻本亮平) YHCが手掛ける法人向け引越サービスでの不適切な代金請求について、ヤマトHDは7月に調査を実施。2016年5月から18年6月末までの26カ月間で、2640社(約4万8千件)に対して17億円の過大請求があったことが判明した。これを受け、7月23日には外部の専門家で構成する調査委員会を設置、原因の究明を進めてきた。 YHCでは、法人・個人を対象とした引越サービスで、輸送する家財の量に応じた料金体系を設定。同サービスの約款では、見積もり時と実際の輸送時とで家財の量により料金が変わった場合、修正して精算するよう定めているが、実際には順守されないケースが多く、過大請求が頻発した。 調査委は報告書で、YHCの①商品設計②教育③法人契約④会社の組織体制⑤社員の処遇面⑥内部通報制度⑦内部監査――で重大な不備があることを指摘。これらの要因により、多くの従業員が、積み残しをしないよう多めに見積もった額などを「(修正すべき時も)そのまま請求することが正しいと誤認している」状況に言及した。 また、一部の地方統括支店で、意図的に料金を上積みする事例がみられたことを報告。支店長が黙認していた事例もあり、ヤマトHDの山内氏は「倫理意識の欠如があったことを重く受け止めている。ヤマトグループ全体で、意識の高揚を進めなければならない」と述べた。 調査委からの提言を受け、ヤマトHDとYHCは再発防止策を講じる。引越商品の再設計などに向け、神田晴夫ヤマトHD副社長がYHC会長を兼務。YHCに専任部署「引越サービス部」を立ち上げ、顧客や従業員にとって分かりやすい商品を開発する。また、YHCに教育体系の構築に取り組む新部署を設置するとともに、社員の待遇や業績評価方法を見直す。ヤマトHDには社長直轄の「グループガバナンス改革室」を設け、ヤマトグループ全体の意識改革を推進する。 今後の対応では、商品を再設計するため、法人・個人向けを含む全ての引越サービスで新規受注を中止する。改善策に取り組み、再発防止策が機能し始めた段階で、販売を再開する予定だ。一方、調査報告を受けた国交省は、行政処分も視野に入れ、対応を探る。 更に、ヤマトHDは役員の処分についても報告。過大請求発生時にYHC社長を務めていた市野厚史(ヤマトロジスティクス社長)、長谷川誠(ヤマトリース社長)の両氏を降格させ、和田社長を減棒処分とした。また、ヤマトHDの木川眞会長、山内氏ら幹部5人は、月額報酬の一部を3カ月間、自主返上する。 【写真=「倫理意識の欠如があったことを重く受け止めている」とヤマトHDの山内社長】