国交省、トラック輸送を円滑に 災害に強い物流めざす 荷主責任課す仕組み導入
行政
2018/09/06 0:00
経済の好循環の拡大や大規模災害時のネットワーク確保の観点から、道路政策に占める物流の位置付けがますます高まっている。国土交通省では、2018年度中に重要物流道路の指定、連結トラックの導入促進に向けた特殊車両通行許可基準の制限緩和、過積載に対して荷主に責任を課す仕組みの本格導入などが実現する見通しだが、19年度以降もトラック輸送の円滑化、適正化に向けたハード・ソフト対策を推進していく。(田中信也) 8月29日に発表した2019年度の概算要求で、「効率的な物流ネットワークの強化」の予算として18年度当初予算比29%増の4374億円を要望。道路局は、道路の老朽化対策や大規模自然災害からの復旧・復興、高速道路の安全性確保とともに、平常時、災害時を問わない物流ネットワークの強化、物流システムの効率化など物流対策の推進を重要施策に掲げている。 深刻なドライバー不足が進行するトラック輸送の効率化・省人化を図る観点から、18年度からの「ダブル連結トラック」の本格導入、22年度にはトラック隊列走行の商業走行実現を見据えている。このため、新東名高速道路の両側6車線化事業に8月から着手。構造物が6車線に対応した静岡県区間(延長145キロ)について、20年度から順次供用開始することを目指している。 ダブル連結トラックの本格導入に向けては、18年度中に「特車通行許可基準」で規定された車両長を現行の21メートルから25メートルに緩和。22年度の商業化を目指す隊列走行については、道路局と経済産業省の連携により新東名などで実証実験を始めており、この結果を踏まえ、事業環境整備に関する官民の役割分担を含め検討を進めていく。 また、全国的な物流網の形成と、平常時、災害時の円滑な輸送を確保するため、40フィート背高国際海上コンテナの特車通行許可を不要とするなどの特例措置を設ける「重要物流道路制度」を創設する。8月22日、制度創設に必要な道路構造令などの改正案を公表した。新たな広域道路交通ビジョン・計画を都道府県、地方ブロック単位で幅広く検討した上で、計画路線を含め対象を抽出。まず既存路線について、国交相が18年度末までに指定する。 特車許可制度に関しては、「荷主からの要求や非効率な商習慣が要因」とのトラック運送業界の指摘を踏まえ、申請時に荷主名などの記載を求めるとともに、車両制限令違反の基地取り締まり時に荷主名、業種などを聴取し、荷主勧告に向けた取り組みを強化するといった、荷主にも責任を課す仕組みを導入していく。 特車通行許可申請時の荷主名記載は、申請書に記載欄を設け、記載がある申請に対し、優先的に許可審査を行うもの。1~2月に北海道開発局が試行しており、その後、全地方整備局で順次実施する計画だったが、西日本豪雨の発生による鉄道・幹線道路の不通に伴うトラックの代替輸送やルート変更などに対し、特車許可の優先処理を行った影響もあり、他の地整局での試行は見合わせていた。 今後は、復旧の状況を踏まえて北海道以外の地域で試行し、当初計画通り18年度内に全国で本格運用を開始する方針。一方、荷主情報の聴取は、17年12月から全ての地整局で試行を実施しており、18年度中には本格導入に踏み切る見通しだ。 また、特車通行許可の迅速化に向けては、各地整局の道路管理用車両に、レーザーやカメラで道路基盤地図データを収集・解析するセンシング装置を搭載し、地方管理道路を含めた一般道の3次元データの取得を8月から順次開始。得られたデータを基に、道路情報便覧に未収録の地方道のデータベース化を進めていく。 一方、高速道路の老朽化対策として、悪質な車限令違反者に対するETC(自動料金収受システム)コーポレートカードの大口・多頻度割引の停止措置などの罰則を17年度から強化した。17年度は、1カ月の割引停止措置を25社、2カ月の割引停止を3社に課している。 ハード面では、迅速かつ円滑な物流を実現するため、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)など三大都市圏環状道路を中心とする国の根幹を成す道路網を重点的に整備する。首都高速道路都心環状線は、老朽化と日本橋付近の景観向上などを目的に民間プロジェクトと連携した地下化の事業が7月に決定した。一方、地下化により一部で通行が制約される大型車の通行確保に向け、東京高速道路線(KK線)の構造強化や新路線建設を引き続き検討する。 【写真=特車通行許可申請時の荷主名の記載、基地取り締まり時の荷主名の聴取を18年度末までに本格導入(イメージ写真)】