政府/海洋政策本部、北極海航路活用へPT 年度末 意見書まとめ
行政
2018/09/03 0:00
政府は、総合海洋政策本部(安倍晋三本部長、首相)の参与会議の下に北極政策プロジェクトチーム(PT)を設置し、北極海航路の利活用に向けた環境整備などについて集中的に審議し、2018年度末に意見書を取りまとめる。 5月に閣議決定した第3期海洋基本計画で、北極政策を一つの領域として初めて位置付けた。これに基づき、首相任命の有識者で構成する参与会議が7月の会合でPTの設置を決定。PTのメンバーに選出された兼原敦子主査(上智大学教授)ら4人の参与が、8月28日の国土交通省の北極海航路にかかる官民連携協議会にオブザーバーとして参加した。PTの事務局を務める内閣府の担当官が北極政策の概要と、PT設置の趣旨や進め方について報告した。 基本計画には、日本の海運企業が北極海航路を利活用できる環境の整備を進めることのほか、①船舶の航行における安全確保のための海氷速報図作成に利用②パリ協定の適切な実施など北極域での気候変動対策への貢献③国際海洋法条約に基づく「航行の自由」を含む国際法上の原則尊重への積極的な働き掛け――などが盛り込まれた。PTはこうした課題について集中的に議論し、19年3月までに参与会議としての意見を取りまとめ、首相に答申する。 官民連携協議会の会合では、外務、文部科学、国交の各省も北極政策に関する動向を説明した。国交省は17年の北極海航路の利用実績(速報値)を報告。北極海航路沿岸港湾での取り扱いを含む総貨物量は1073万トン超の過去最大規模だが、北極海を横断するトランジット貨物量は19万トン程度で前の年度を下回り、貨物を積載した航行数は18回で横ばいだった。 更に、ロシアのヤマル半島近辺で採掘されるヤマルLNG(液化天然ガス)関連機材を輸送するヤマルプロジェクトに参加し、日本の海運企業としては初めて北極海航路での単独航行を行った商船三井の担当者が、航行の状況や課題などを紹介した。 6月25日からの初航行(往路)では西回りのスエズ経由で35日間かかるところを19日間で航行した。復路は14日間と更に期日が短縮できたことなどを報告。課題として①通年航行に向けた砕氷エスコート船の増備②安全運航に関する国際ルールの策定③北極海航路を熟知した船員の育成④航路沿岸への救難・修繕拠点の整備拡充⑤精度の高い海図の整備――などを挙げた。(田中信也) 【写真=国交省の北極海航路にかかる官民連携協議会の会合で内閣府の担当官が報告】