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西日本豪雨、事務所・車両が浸水 運行効率「著しく低下」 被害 更に増える可能性

産業

2018/07/16 0:00

 西日本を襲った豪雨で、広島・岡山・愛媛県を中心とする運送会社の事務所や車両が浸水するなど甚大な被害が出ている。また、高速道路や一般道で陥没や土砂崩れが起こった影響で、多くの区間で一時通行止めとなり、渋滞が多発。運行効率を著しく低下させた。一方、中四国の一部のトラック協会では、県や市の要請に応じ、救援物資輸送を行っている。=関連記事2・3面(江藤和博、矢野孝明、星野誠、上田慎二)  広島県トラック協会(小丸成洋会長)は会員からの報告を逐次、集計しており、被害は12日午前9時時点で、事務所浸水21件、車両損壊86件、倉庫・工場浸水8件、車庫浸水1件の計116件に上る。支部を通じて集めたデータで、連絡が取れない事業所もあり、更に増える可能性がある。  国道31号と広島呉道路が土砂流出などで寸断された呉地区は、しばらく陸の孤島となり、深刻な状況が続いたが、31号は11日深夜、水尻地区にある海水浴場の駐車場を仮設道路に利用して全線開通。一時は孤立化したが、翌12日午前の時点では、車両は順調な流れを取り戻した。  丸二運送(小野啓志社長、広島県呉市)は本社の事務所や車両に損害は無かったものの、運行に多大な影響が出ている。小野社長(75)は「広島市内へ輸送するのに市内の焼山から安芸郡の熊野町・海田町を経由したが、10日の時点で片道6時間かかった。商品が届かないので閉店しているスーパーやコンビニエンスストアも多い。燃料の確保も心配だ」と話す。  岡山県トラック協会(遠藤俊夫会長)によると、11日朝の時点で会員の被害が50件(床下・床上浸水、車両の流失・損壊など)に達している。大規模な浸水のあった倉敷市真備町を中心に高梁市、総社市、矢掛町などでの被害報告が多く、岡山市東部で被害を受けた事業所もあった。  岡ト協は9日、一斉にファクスして状況を尋ねたが、通信遮断によりエラーで返ってくる事業所もあった。今後は職員を現地に派遣して確認するが、被害は更に増える見込みだ。  藤森運輸(藤森元則社長、岡山県倉敷市)は、大雨に見舞われた6日ごろから自社のトラックを山口県や愛知県、大阪府などに待機させ、8日にようやく帰ってきた。9日以降も国道2号の渋滞や山間部のう回路利用で運行効率が低下。また、操業休止に追い込まれた荷主からキャンセルも出て荷物量が減少している。社屋や倉庫、車両などに被害は無かったが、中島倉庫(倉敷市)と倉敷営業所(同)の従業員2人の自宅が浸水被害に遭い、一時出勤できない状況となった。  一方、四国でも事態は深刻だ。愛媛県トラック協会(一宮貢三会長)は9日、被害状況を調べるため、会員企業に調査用紙をファクス送信。回線不通などにより回答が得られず、大きな被害が及んだと考えられる地域には、職員が直接足を運んで確認した。  現地を回った職員によると、肱川の氾濫(はんらん)によって広範囲が冠水した大洲市では、水位が最大で1.5~2メートルに及び、地場の運送会社や大手特積事業者の各営業所で浸水被害が多発。中には、トラック10~20台が運転席の上まで水に浸かったケースもあり、復旧は長期戦の様相を呈している。  こうした状況下で愛媛ト協は、県の要請を受け7日午後8時から、緊急物資輸送を開始。第1便として、大洲市の1次集積所に毛布1800枚を届けた。  9日以降も物資輸送は続き、同市と西予、宇和島両市の1次集積場に、飲料水や食料、日用品、復旧作業に必要なスコップや軍手などを供給。国から託された冷風機なども運んでいる。  このほか、愛媛ト協女性協議会(山崎八生会長)は独自の支援活動に動き出した。正副会長や有志など4、5人が、同業者が大きな損害を受けた大洲市で、状況を見ながら炊き出しなどを行うことを検討している。  比較的被害の少ない高知県トラック協会(森本敬一会長)でも9日、全会員にファクスで調査用紙を送り、11日午後までに車両や倉庫の浸水、事務所水没など4件の報告を受けた。岡山県の被災地を運行中に車両が水没したケースも含まれている。  そうした中、復旧まで長期化が懸念された高速道路は着々と復旧している。9日には、中国自動車道が全線開通。また、山陽自動車道も10日朝に福山西インターチェンジ(IC)―河内ICが、14日に河内IC-広島ICがそれぞれ開通。西日本高速道路(酒井和広社長、大阪市北区)ではこれに先立ち、河内IC-広島ICで救援物資輸送の車両が通行できる措置を取っており、道路環境が整ってきた。  広ト協では市町の要請を受け、8日に1台、9日には10台のトラックを出動させ、救援物資を輸送した。  8日は尾道市役所に食品、飲料、毛布、9日には府中市役所や竹原市役所、東広島市役所、坂町役場、呉市の施設など7カ所に食品や飲料、土のう袋などを運び込んだ。緊急車両は福山通運のほか、県の備蓄倉庫(本郷町)の近くに営業所を持つ双葉運輸(長谷川忠宏社長、広島市西区)が提供した。   岩本和則専務(65)は「救援物資輸送は長期化するだろうが、各市町にはある程度の備蓄があり、当面はそれで対応できるのではないか。問題は全国から送られてくる救援物資をどうさばくかだ。国や県の判断によっては、県外に集配拠点を設ける可能性もある」とみている。  一方、岡ト協は、7日に県の要請で避難所2カ所に毛布を運んで以来、11日朝の時点で要請は来ていない。自治体によっては自前の備蓄で対応しているためとみられる。  倉敷市はホームページなどで、個人の支援物資は受け付けない旨を公表。岡山市内には自主的に支援物資を募って被災地に輸送する取り組みを始めた運送会社もあるが、当面は行政からの正式な要請を受けてからの出動となりそうだ。  また、山口県トラック協会(河崎静生会長)は11日までに、地元の社会福祉協議会の要請で県内にボランティアで機材を運んだだけ。高知県トラック協会(森本敬一会長)でも同日までに要請は無く、1台も出動させていない。  また、大雨特別警報が出された岐阜県でも、運送会社の事務所などで被害が出た。岐阜県トラック協会(田口義隆会長)によると、会員企業1社で床上浸水、郡上市の1社で床下浸水の被害が報告された。また、県からの要請に基づき、7日に会員企業のトラック2台が郡上市に水やパンを輸送した。  長崎県トラック協会(塚本政治会長)では、7月9日午後1時、海上自衛隊佐世保地方総監部から「非常時の輸送能力確保に関する協定」に基づき、緊急輸送の要請を受けた。日本通運佐世保支店のトラック2台が、長崎県佐世保市から広島県呉市へ向けた食料(缶詰、カップ麺、コメなど計1万1500キロ)を輸送した。 【写真=JR水尻駅(広島県坂町)の前では、国道31号が土砂に覆われ、復旧工事が急ピッチで行われている(12日)=写真江藤和博】





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