働き方改革法が成立 自動車運転業務 24年に時間外上限適用
産業
2018/07/02 0:00
働き方改革関連法案が6月29日、参院本会議で可決、成立した。2024年4月から自動車運転業務への罰則付き時間外労働規制が適用される。当面は年間960時間の特例が適用されるが、28日の参院厚生労働委員会(島村大委員長)では47項目に及ぶ付帯決議が採択され、施行から5年の猶予期間中でも実労働時間・拘束時間の削減策を講じることや、年間720時間の一般則を一部の事業・業務で先行して適用することなどを要請。トラックについては、業務特性などを十分に踏まえ、改善基準告示を定めるよう求めている。付帯決議には法的拘束力が無いものの、厚生労働省などの関係機関はこうした趣旨を踏まえ、改善基準の見直しなどに取り組む構えだ。(田中信也) 働き方改革関連法案の審議では、高度プロフェッショナル制度の導入を巡り、与党と主要野党が最後まで激しく対立。参院厚労委では立憲民主、共産などが委員長の解任決議案を提出し、採決を拒否したが、国民民主はこれに同調せず、解任決議案が棄却され、採決では与党と日本維新の会、希望の党などの賛成多数で了承された。 一方、同法の施行により長時間労働を助長したり、労働条件の悪化を招いたりしないよう、自民、公明、国民民主、立憲民主などの賛成多数で、47項目にわたる付帯決議を採択。時間外・休日労働に関する労使協定(三六(さぶろく)協定)で定める時間外労働上限規制の対象に加わる自動車運転業務に対しても、実効性確保に向けた措置が多く盛り込まれた。 時間外労働の上限については、特例が適用される自動車運転業務でも原則的上限である年間360時間の水準に収める努力をするとともに、時間外労働に含まれない休日労働についても最小限に抑制することを指針に明記し、労使双方に周知徹底を図るよう要請。5年間の猶予期間中も、時間外労働削減に向けた実効性ある取り組みを関係省庁・団体が連携して推進するよう求めた。 また、過労死や精神疾患などの健康被害が深刻で、労働力不足に陥っている運輸・物流産業の現状を踏まえ、「決して物流を止めない」との決意の下、休日労働を含まない年960時間の特例適用から、できるだけ早期に一般則へ移行できるよう関係省庁や労使、荷主を含めた協議の場で議論を加速し、猶予期間中であっても実効性ある実労働時間、拘束時間の削減策を講じるよう指示。特例適用後、一般則への移行に向けた検討を行うに当たっては、全面的な適用が困難な場合でも一部の事業・業務などで先行的に適用することを提起した。 更に、衆院厚労委の付帯決議で「特例適用までの間に見直しを行う」とされた改善基準告示に関して、見直しの具体的な措置を盛り込んだ。過労死防止の観点から、告示で定める総拘束時間について関係省庁と連携して速やかに改善を検討するよう要請。中でもトラックドライバーについては、早朝・深夜、交代制、宿泊を伴うなどの多様な勤務実態、危険物の配送といった業務の特性を十分に踏まえ、厚労相の諮問機関である労働政策審議会で議論し、実態に応じた基準を定めるよう求めた。 また、法の順守に向けた環境整備のため、荷主の理解と協力を得るための施策を強力に実施するなど、取引環境の適正化、労働生産性向上といった長時間労働是正に向けた実効性ある具体的な取り組みを速やかに推進するよう、関係省庁に要請した。 付帯決議に盛り込まれた取り組みのうち、特に改善基準については、猶予期間中に見直すとの要請に基づき、厚労省や国土交通省などの関係機関は早期に検討に着手することが求められる。 ただ、働き方改革関連法に関する課題が山積し、かつ現行の告示ができるまで、協議に1年半かかったように、慎重な審議が必須となるため、長期戦が予想される。改正される場合、最短でも時間外労働上限規制の特例適用と同時期になるとみられる。 【写真=採決では与党と日本維新の会、希望の党などの賛成多数で可決】