タクシーの貨物運送、来年度まで結論 規制改革会議が答申 緩和「不可避」か?
行政
2018/06/14 0:00
政府の規制改革推進会議(大田弘子議長、政策研究大学院大学教授)は、4日に安倍晋三首相へ提出した規制改革推進に関する第3次答申で、利用者のニーズや生産性向上、労働力不足解消といった観点を踏まえ、タクシーの車両を利用した貨物運送事業の在り方について検討し、2019年度までに結論を出すよう求めた。国土交通省はタクシーでの貨物運送に難色を示してきたが、何らかの規制緩和は避けられないとみられる。(田中信也) 政府全体で取り組むべき重要課題に、新たな需要に応える旅客・貨物運送事業の規制改革を掲げた。三和交通(吉川永一社長、横浜市西区)からの提案を踏まえ、タクシー事業者が買い物代行、病院の代理受け付けなどを行う救援事業に着目した。 救援タクシーではこれまで、忘れ物のお届け、ペットの運送といった貨物運送に類似したサービスをタクシー事業の妨げにならない範囲で行ってきた。一方で、インターネット通販の普及に伴い、タクシーによる貨物運送の需要は年々上昇。トラック業界のドライバー不足を受け、救援タクシー活用の要望はあるものの、社会通念上、運送行為とみなされるものは、貨物自動車運送事業法の通達に基づき認められていない。 規制改革会議は、貨物需要の増加や利用者ニーズの多様化を受け、「カギや書類、研究資材など重要な物品を早急に届けるといったサービスの需要に、現行では十分に応えられていない」と指摘。救援タクシーの考え方を整理する必要性に言及し、タクシー本来の業務を妨げず、社会通念上、貨物運送行為に該当しない「救援事業」の範囲を明確化するよう求めた。 加えて、利用者ニーズや生産性向上、労働力不足の解消といった観点を踏まえ、貨物自動車運送事業法に基づきタクシー車両を利用した貨物運送の在り方を検討するよう要請した。 いずれも18年度に検討をスタートさせ、救援事業の範囲は同年度中に結論を出すよう要求。タクシーによる貨物運送は、関係者の意見を踏まえるともに、輸送の安全、利用者利益が損なわれないよう留意しつつ「19年度中に結論を得る」としている。 規制改革会議との折衝で、国交省自動車局は「トランクに収まる荷物のみ運送」「定期便、ルート集荷・配送はせず、1契約1回の運送」といった三和交通の提案に対し、「典型的な貨物運送で、貨物事業許可が大前提」と到底容認できないことを強調してきた。だが、今回答申に盛り込まれたことで、何らかの規制緩和は避けられない情勢となった。 なお、第3次答申ではこのほか、物流、卸・小売り事業者や、物流インフラ、卸売市場制度といった制度・慣行などあらゆる側面からの「卸売市場を含めた流通構造改革」、水産物流通の集約化や水揚げ漁港の重点化などを含む「漁業者の所得向上につながる流通構造の変革」なども掲げている。 【写真=利用者のニーズや生産性向上、労働力不足解消といった観点を踏まえ、貨物運送事業の在り方について検討(イメージ写真)=一部画像処理】