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労契法20条の初解釈、非正規格差が項目と判断 定年再雇用 賃金減額「合理的」 同一労働同一賃金に影響

行政

2018/06/07 0:00

 非正規社員のドライバーが正社員との格差是正を求めた2件の訴訟の上告審で、最高裁第二小法廷(山本庸幸裁判長)は1日、判決を言い渡し、格差が不合理かどうかは賃金項目ごとに検討すべき――との判断を示した。一方、定年退職後の再雇用者への賃金引き下げは「合理的」とし、控訴審の考えを踏襲。労働条件の不合理な格差を禁じる労働契約法20条の解釈について、初めて判断が下された。政府が進める「同一労働同一賃金」の議論にも影響を与える可能性がある。(土屋太朗、高木明)  ハマキョウレックスのケースは、契約ドライバーが賃金や七つの手当の格差解消を求めたもの。2015年5月の一審は通勤手当のみ「不合理」とし、16年7月の控訴審では違法となる手当の種類を無事故手当や給食(食事)手当など4種類に拡大。ドライバー側と会社側の双方が上告していた。  今回の上告審判決では、会社側の上告を棄却。その上で、皆勤手当を支給しないことについても違法性を認め、当該ドライバーが支給要件に当てはまるかどうかを審議するため大阪高裁へ差し戻した。  皆勤手当の支給が加われば、同社の支払いは、二審判決で言い渡された77万円から100万円程に膨らむとみられる。  一方、長沢運輸(長沢尚明社長、横浜市西区)の場合は、定年退職後に再雇用されたドライバー3人が格差是正を求めた。16年5月の一審では、ドライバー側の訴えを認め、会社側に400万円以上の支払いを求めたが、16年11月の控訴審では一審判決を取り消した。  上告審でもこの考えを支持。定年退職後の再雇用者と正社員との格差は労契法20条の適用対象としながらも、定年後の有期雇用契約は「社会一般的に広く行われている」とし、これに伴う賃金引き下げは「合理的」とした。  この考えを考慮した上で、ハマキョウのケースと同様に、賃金項目に応じて不合理かどうかを検討する必要性を指摘。精勤(皆勤)手当と時間外手当を支払っていないのは「不合理」と判断し、このうち時間外手当についての審議は東京高裁へ差し戻した。一方で、職務給や住宅手当などが支給されないのは「合理的」とした。  「アクセルとブレーキを同時にかけられた印象だ」。判決後に開かれた記者会見で、ドライバー側の弁護団はこう表現した。ハマキョウの事件を担当した中島光孝弁護士は「相当の格差是正につながる。全ての非正規社員に対し、影響は大きい」と語った。  対して、長沢運輸のドライバーは「全く不当な判決」との声明文を発表。「労契法20条の趣旨に反し、定年後再雇用という点を過大に重視したものであり、定年後再雇用者に対する20条の適用を実質的に否定するもの」と批判した。  大須賀秀徳・ハマキョウレックス社長の話 今回の最高裁の判決を厳粛に受け止めることは言うまでもないが、「同一労働同一賃金」ばかりクローズアップされ、それを払拭(ふっしょく)できなかったのが残念でならない。働く側と雇用する側の思いが微妙に違っていることも現実であり、この辺りをしっかりと見極めながら対処していく必要がある。今後、当社も賃金体系が時代の流れに沿っているのか改めて検討する絶好の機会として捉えていく。  長沢運輸の話 今回の最高裁の判決は、精勤手当以外は、会社の主張が全面的に認められたと受け止めている。精勤手当の不支給を違法とされた部分については、判決の内容を精査して差し戻し審での対応を検討する。  ▼労契法20条 同一社内の有期契約労働者と無期契約労働者との間で、期間の定めがあることにより、不合理に労働条件を相違させることを禁止するルール。賃金や労働時間など狭義の労働条件だけでなく、労働契約に盛り込まれる服務規律や付随業務、福利厚生など労働者への全ての待遇が対象となる。労働条件の相違が不合理かどうかは①職務内容(業務内容、責任の程度など)②職務内容・配置の変更の範囲③そのほかの事情――を考慮し、個々の労働条件ごとに判断される。 【写真=長沢運輸のドライバーは「定年後再雇用者に対する20条の適用を実質的に否定するもの」と批判】





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