軽油、半年で15円上げ 人件費・傭車費高止まり トラック業界が再び3重苦 価格転嫁を強化 陸運大手
産業
2018/06/04 0:00
トラック業界に暗雲が漂い始めた。石油情報センターが5月30日発表した軽油現金価格調査によると、28日時点で129.4円(1リットル当たり)と6週連続で値上がりし、7.4円高くなった。更に、半年前に比べると、15円も高くなっている。陸運大手では「従来にも増して価格転嫁の取り組みを強化していかねばならない」と気を引き締める。人手不足による人件費や傭車費の高止まりも続いており、物量減、燃料価格高騰、低運賃だったリーマン・ショック時の状況とは違うが、業界では再び「三重苦」の状況に陥りそうな情勢だ。(高木明) 「これまでのような好況感が(今期も)続くとは思えない。数字(業績)は堅めに読んだつもりだ」。セイノーホールディングスの田口義隆社長は、5月18日に開催した決算説明会で、経営環境の変化や2019年3月期の業績見通しなどについて、こう語った。 セイノーHDは今期の連結業績を売上高6020億円(前期比1.0%増)、営業利益284億円(1.9%増)と予想。18年3月期は売上高が前の期比5.0%増、営業利益も2.8%増だった。18年3月期の燃料費の総支払額(輸送事業)は12.8%増えたが、田口氏は「今期は前期以上の値上り幅を前提とした予算づくりを行った」と強調した。 福山通運も事情は大きく変わらない。19年3月期は売上高、利益ともに、18年3月期からの「減速」を見込む。売上高2765億円(前期比3.2%増)、営業利益171億円(16.1%増)と予想する中、燃料費は18年3月期は前の期比17.1%増で、今期も12.4%増を見込む。小丸成洋社長は「人件費、傭車費、燃料費などコスト上昇要因は目白押し。これを吸収していくには運賃値上げを全荷主に浸透させていかねば」と意気込む。 センコーグループホールディングスは2019年3月期、燃料単価アップが6億3千万円の経常利益押し下げ要因と読む。業績予想は売上高5300億円(前期比7.7%増)、営業利益193億円(12.9%増)だが、燃料の単価アップ分は料金改定やM&A(合併・買収)による売上高拡大などで吸収していく。福田泰久社長は「物流業界の人手不足を知っており、運賃・料金の引き上げに理解を示してくれる取引先が増えてきている」と話す。 物流業界で人手不足などを背景に、多くの事業者が運賃・料金の引き上げに本格的に動き出したのは一昨年当たりからだ。業界最大手の日本通運では18年3月期の年間平均は90.66円だったが、19年3月期は97.10円と想定している。 仮に、燃料価格が続騰すれば、値上げ交渉がこれまで以上に活発化するのか、それとも下方修正で対処するのか――。今後の軽油価格の動向にも目が離せない状況だ。