誠和梱包運輸、「スイッチ輸送」拡大 長距離サービス安定供給 積み替え作業から解放
物流企業
2018/05/17 0:00
誠和梱包運輸(畦淳造社長、広島県呉市)は、中継基地でドライバーが交代して発地点に戻るスイッチ輸送を拡大する。昨秋から千葉県―九州のトラック輸送で取り入れているが、2018年夏には広島県―関東でも始める予定。その後も導入路線を増やしてノウハウを蓄積し、長距離輸送サービスを安定的に提供できる体制を構築。同業者が次々と長距離輸送から撤退する中、将来の輸送力確保に不安を抱く荷主に売り込む。(江藤和博) 同社のスイッチ輸送は自社完結方式。千葉県―九州のスイッチ輸送は、双方から来た自社車両(大型ウィング車)が東広島支店(東広島市)で待ち合わせ、ドライバーが交代して千葉からの車両はそのまま九州へ、九州からの車両は千葉へ向かう方式。荷物の積み替えが不要となり、改善基準告示を100%順守できるようになったという。 輸送品目は建材で、往路・復路とも同一荷主。現在は1日1便の定期運行をしており、十数人の従業員がこの運行に携わる。畦社長は「配車担当者は大変だが、時間短縮の効果は大きい。当社は24時間の点呼をしているので、時間調整などの業務は次の配車担当者が引き継いで徹底している。スイッチ輸送は同一荷主による定期輸送でなければ導入は無理」と話す。 一般的に、ドライバーは車両の共有を嫌がる傾向があるが、同社では積み替え作業から解放されるメリットなどを説明して理解を得た。スイッチ輸送の車両は禁煙とし、車内清掃もまめに行っており、今では「車両は会社所有の共有物」という認識が定着している。 スイッチ輸送を成功させるための最大の難関は荷主の理解だ。一人のドライバーが全工程を運転するよりコストが高くなるため、千葉―九州では、2、3割の運賃アップを実現した。畦氏は「荷主もコンプライアンス(法令順守)が求められており、将来的にドライバーを確保できなくては困るはず。その点を強調して荷主の理解を得ていきたい」と語る。 同社は広島県を地盤に東北、関東、関西、四国、九州に営業所を構えており、これらの拠点を中継基地として活用しながらスイッチ輸送を広げていく。輸送ルートによっては新拠点を設ける。現在は山口県―愛知県でスイッチ輸送の案件が浮上しており、中間にある滋賀県での営業所設置を検討中。また、ドライバーが中継基地で十分な休憩が取れるよう仮眠施設を充実させ、東広島支店ではベッドやシャワーなどを完備する計画だ。 17年12月期の売上高は88億円で、16年12月期の74億円を大きく上回った。17年9月にオープンした吉川ロジスティクスセンター(東広島市)が当初からフル稼働していることなどから、18年12月期は100億円の大台に乗るのが確実となっている。 畦氏は「今後は本格的に運賃の値上げも行ってドライバーの待遇改善に結び付けていく。また、20年の東京オリンピック・パラリンピックまでに拠点新設や減価償却を進め、一定の体制をつくっていきたい」と話している。 【写真=千葉―九州の中継基地となる東広島支店】