二葉観光運輸/タクシーで貨客混載、6月メドに本格営業 地域物流を支え 買い物代行も検討
産業
2018/02/19 0:00
二葉観光運輸(頼正宏志社長、岡山県矢掛町)は、1月16日に全国で初めて認可を受けた旅客、貨物の両運送事業を「掛け持ち」する貨客混載事業について、春までに料金体系を決め、6月をメドに本格営業へ乗り出す。新事業は、ドライバーの賃上げと地域貢献が大きな狙い。頼正健志専務(56)は「地域には自動車免許の返納を考えている高齢者が多い。タクシーで貨物輸送を肩代わりし、地域物流を支えたい」と強調する。(江藤和博) 同社は1964年に一般区域貨物自動車運送事業の免許を取得し、67年に設立。農業協同組合を主力荷主とするトラック事業から始まった。その後、貸切バス、タクシー、観光の各事業に業容を拡大してきた。 今回は8台の保有タクシー(ジャンボタクシー含む)による貨客混載を申請し、中国運輸局から認可された。タクシー事業者が貨客混載の認可を受けるのは全国初で、トラック業界からも関心を集めている。 具体的なサービスはまだ検討中だが、当面はJA倉敷かさや(安藤憲男組合長)が運営する「矢掛宿場の青空市きらり」への農産物の配送からスタートする予定。現在は生産者が搬入や商品への名前入れ、陳列、売れ残り品の回収などを行っているが、これを肩代わりすることで生産者の負担を軽減する。 実際の混載輸送は、車内を汚さないため座席は使わず、車両後部のトランクを活用する。トランクは混載用に改造するわけではなく、荷量はトランクの容積を考慮し、10キログラムまでを1個単位として5個程度(1運行55キロ未満)にとどめる方針だ。 悩ましいのは料金設定。地域活性化に寄与するため、手頃な水準にする必要があるが、宅配便業者への配慮も必要だ。頼正専務は「宅配便に迷惑をかけない運賃設定をしたい。また、サービスを提供するエリアは矢掛町内が基本」と話す。 同社のタクシー1台が1日に上げる売り上げは2万円前後。午前中の病院への送迎が中心で、午後は稼働率が落ちる。貨客混載で売上高10%アップを目指し、収益はドライバーに還元していく。 貨客混載は農産物配送にとどまらず、裾野を広げられる可能性を秘めている。二葉観光運輸では、井原鉄道・井原線の矢掛駅の管理を受託しており、カフェなどを設け、青空市きらりで売れ残った野菜を加工販売する構想もある。 また、高齢化した住民のための買い物代行も検討している。二葉観光運輸が地元のスーパーや商店と契約し、住民は店に電話などで商品を注文。店側が注文ごとに取り分けた品物をタクシーで回収し、高齢者が集う「ふれあい・いきいきサロン」などへ届ける。これが実現すれば、高齢者が自動車を運転する機会が少なくなり、地域の交通安全にも貢献できる。 二葉観光運輸はタクシーのほかトラック11台、貸切バス14台を保有し、ドライバー25人(平均年齢50.3歳)を抱える。このうち10人は3部門に対応できる自動車免許を持つ。 未経験者をゼロから育成しており、資格取得支援制度も整備。人手不足には直面していない。また、安全の面ではトラックでGマーク(安全性優良事業所)認定を、貸切バスでも安全性評価認定制度で三ツ星の認定を受けている。高い輸送品質を生かしながら新事業を盛り上げていく。 頼正氏は「矢掛町内で営業し、お役に立てるサービスを一つでも提供していきたい。タクシーの貨客混載が軌道に乗れば、バン型の貨物自動車を使った旅客輸送にも取り組むつもり」と意欲を示している。 【写真=貸切バス、タクシー、観光の各事業に業容を拡大】