香川商事、アートトラ 好みに任せ 自主性・定着率を向上
物流企業
2018/02/12 0:00
【香川】香川商事(香川政道社長、香川県三豊市)は、1992年3月設立の若い会社だが、専属便と倉庫管理業務を手掛け、小回りの利くサービスで荷主との信頼関係を構築している。保有車両は4トン車をメインに13台で、ドライバーの好みに合わせたアートトラックを採用。車両への愛着を高め、自主性や定着率の向上につなげている。(江藤和博) 香川社長(51)は左官業の父の跡を継いだが、「これから建築業界は厳しくなる」という父の言葉もあり、20歳の時にダンプに乗り始めた。最初は砂や砂利を運んでいたが、近隣の運送会社から雑貨などの仕事を紹介され、一般貨物運送事業に進出した。 ドライバーの年齢は20代と40代に固まっており、30代は1人。定着率は高く、どこに勤めても続かなかったという20代の若者が倉庫管理の仕事から始め、3年経過した現在も元気に活躍しているという。 特定荷主の専属輸送を手掛け、全線とも高速道路を利用。輸送エリアは東が神戸、西は広島までで、改善基準告示は100%順守している。 香川氏は「午前8時から午後5時の勤務時間が基本。仕事が終わっていないドライバーを他の従業員が手伝う企業風土ができている。皆が仲良く、楽しくやらないと仕事は続かない」と話す。 アートトラックは、シルバーのキャビンにレッドのルーフを基調とし、これをコーポレートカラーとしている。荷主からは「ウルトラマンカラー」と言われることもある。ボディー回りなどベース部分は会社が発注するが、細部はドライバーの好みに任せている。ただ、パーツ発注は香川氏の承諾を得る必要があり、会社全体で統一感が出るようにしている。 香川氏は「従業員を縛ることはせず、本人の自主性、自覚を大切にしている。洗車にしても命令することはなく、全員が毎日出発時にバックミラーなど主要部分の汚れをふき取り、帰庫時には洗車を欠かさない。アートトラックは光ものの飾りを装備しているので、手入れが行き届いているかどうかがひと目で分かる」という。 従業員の待遇改善にも力を入れ、話し合いの上で売り上げに応じた寸志を支給。業界水準に見劣りしない賃金を実現している。また、各種資格の取得を支援する制度もある。そんな中でアートトラックは、車好きの人材を確保する大きな助けにもなっており、「これまで人手不足を感じたことはない」という。 一方で、全車にデジタルタコグラフとドライブレコーダーを搭載しており、「ここ3年で第一当事者事故や違反は無い」。また、毎月第一月曜日は30分から1時間早めに出勤し、会社回りを清掃。自治会から感謝され、野菜を無償提供されることもしばしばだ。 今後の課題は倉庫管理業務の拡充。現在はメーカーの倉庫にスタッフを派遣する形だが、本社の近隣に床面積2千平方メートル程度の倉庫を購入し、夏ごろをメドに稼働させる計画だ。軽貨物自動車を2台保有しており、倉庫管理と絡ませながら「1個でもタイムリーに届けるサービス」を広げていく。 香川氏は「これからは、全ての顧客と仕事内容を全従業員が把握できるようにしたい。新規の仕事は私が最初にトラックに乗って改善提案ができるまで形をつくり、一定のレベルになったら他のドライバーに担当させていく。和気あいあいとした職場の雰囲気を大切にしながら、皆で新しい仕事に取り組んでいけたらいい」と話す。 また、「専属便で新規の仕事があれば対応していきたいが、重要なのは地元企業との信頼関係。一つひとつのパイプを太くしていきたい」と強調している。 【写真=アートトラックの前に立つ香川社長】