北陸/記録的大雪、本紙記者が通行止め遭遇 車列がどこまでも続く 15キロ進むのに3時間
産業
2018/02/12 0:00
6日早朝、福井県トラック協会(清水則明会長)と福井市内の事業者を訪問する予定で、名古屋市内を出発した。名神高速道路の電光掲示板で、北陸自動車道・武生インターチェンジ(IC、福井県越前市)から先が大雪で通行止めだと知ったが、渋滞は覚悟の上で福井に向かった。 午前8時40分、武生ICから2キロ手前で、先行のトラックがピタリと止まった。見ると、どこまでも車列が続いている。30分後に動き出したが、500メートルほど走って再びストップ。武生ICから出られたのは午前9時45分で、そのまま近くのひまわり運輸(佐治覚栄社長、越前市)を目指す。国道8号を敦賀方面に向かうと、福井市内へ行く反対車線は既に大渋滞が始まり、車が動く気配は無い。 「雪かきで疲れた」と言いながら迎えてくれた佐治社長は「大雪で荷主の操業が止まり、関東方面を走行中の車両を除き、トラックは全て運行を停止した。顧客企業でも従業員が出勤できなくなっている」と説明。駐車場の平ボディー車の荷台には、まるで荷物のように大量の雪が詰まっており、「この雪をかき出すだけでも大変」と苦笑した。 福井市へ向け大渋滞の国道8号を走ると、雪の降り方がどんどん激しくなる。路肩と中央分離帯は、目測で150センチ以上の雪に覆われ、路面との境界線が全く分からない。時速10キロほどのノロノロ走行をしては、長時間ストップを繰り返す。気温はマイナス3度。路面の雪は不規則な凹凸状態に凍結しているため、車体は上下左右に大きく揺れる。前のトラックもガタガタと音を立てながら、アイスバーンと格闘している。 わずか15キロ進むのに3時間をかけ、ようやく福井市境を越えるが、交差点の手前で車列が全く動かなくなる。進行方向では、低床トレーラが斜めに2車線をふさいでいた驚いたことに、反対車線も4トントラックが斜めに立ち往生している。しばらくして、近隣の住民だろうか、スコップを持った男性3人が4トン車のタイヤ周りの除雪を開始し、この車両は脱出に成功した。 交差点をふさいだトラックが居なくなり、Uターンが可能になった。福井市内へ行くのをあきらめ、逆方向に走る。甲斐運送(甲斐俊光社長、鯖江市)を訪ねると、ショベルカーで除雪作業をしていた。甲斐社長は「明日(7日)積みの3、4台を除き、自分の判断でトラックを止めた。ただ、一部でも車両を動かす以上は責任があるので、今夜は会社に泊まり込む」と語った。 「なるべく早く帰った方がいい」と甲斐氏にアドバイスされ、鯖江ICに向かうが、国道8号から左折してICに入る道路を、今度は2トン車がふさいでいた。不自然な形で軽自動車が止まっていたので、接触事故が原因かも知れない。分厚い吹きだまりに覆われた脇道へとう回し、ICから北陸道に乗ることができたが、大雪の恐ろしさを改めて思い知らされた1日だった。 国道8号は普段でも、トラックの通行量が非常に多いが、今回は更に多いように感じられた。関東、関西、中部の各ナンバーの大型トラックやトレーラが目立った。福井県内で一時、1500台が立ち往生したが、いったん雪に捕まると脱出が難しくなる大型車の多さも、事態を悪化させた印象がある。 立ち往生に巻き込まれた、北陸トラック運送の水島社長は「大雪の際、大型トラックやトレーラは極力運行を控えるべきだ。市民生活に不可欠な燃料や食料品はともかく、急ぐ必要の無い荷物も多いのでは」と指摘。国道8号で建設資材や大型機械を運ぶトレーラを何台も見かけたが、大雪の中を運ぶほどの緊急性はあったのだろうか。 福井県内のトラック事業者の多くは「止められる車両は止める」対応を取っていたが、中には荷主の意向で運ばざるを得ないケースもあった。水島氏は「状況判断が早く、『運ぶのをやめましょう』と言ってくれる荷主は多いが、そうではない荷主もいる。大雪の危険性を、全ての荷主に理解して欲しい」と強調する。 トラック業界では、手待ち解消など労働環境改善に向けた取り組みが始まっている。荷主と積極的に交渉する事業者も増えてきたが、今回の大雪を教訓に、自然災害時の運行可否の判断についても、話し合ってルールを決めるべきではないか。豪雪の中で無理な運行を強い、ドライバーの健康と生命を危険にさらしているとしたら、それはもはや天災ではなく、人災に他ならない。(星野誠) 【写真=トラックで大混雑する北陸道の南条SA】