川崎陸送、インドに定温倉庫建設 海外初進出 農産物廃棄を削減 太陽光発電システム採用
物流企業
2018/01/18 0:00
川崎陸送(樋口恵一社長、東京都港区)は、インド・西ベンガル州で定温小型倉庫を3月末に完成させ、初の海外事業を本格化させる。劣化を原因とした農産物の廃棄が多いインドの現状を受け、同社の定温保管のノウハウを生かし、現地農家の収益向上と農業の発展に役立てる。2019年には、物流企業を対象としたファンドを設立して建設費用を募り、5年間で倉庫100棟の整備を目指すとともに、他分野の物流ノウハウの吸収に役立てる。(井内亨) インドの農産物は、消費者に届く前に劣化することが多く、全体の3、4割が廃棄処分される。定温の一時保管施設が無いことが主な要因であるとともに、製造分野に優先的に電気を供給するインド政府の政策により、農業では停電が多く発生、農作物が腐りやすい環境になっている。 また、西ベンガル州では、中間業者の多層階構造による農産物の最終販売価格の高騰が問題となっている。そこで、州政府は「クリシャック・バザール」と呼ばれる産直マーケットを360カ所整備し、農家が持ち込んだ農産物を選果後のグレードに応じて直接購入する「スファール・バングラ プロジェクト」を展開している。 川崎陸送は、同プロジェクトと連携。マーケット内に建設する倉庫には、フォークリフトのバッテリーを活用した太陽光発電・蓄電システムを採用し、庫内温度を安定的に保つ仕組みを取り入れる。 同社は東日本大震災を契機に、BCP(事業継続計画)の一環で日本の坂戸流通センター(埼玉県坂戸市)に自家発電装置を導入。計画停電の際には、フォークリフトのバッテリーを活用して電力を賄った。この経験から、屋根にソーラーパネルを設置し、発電された電力を蓄電・活用する仕組みをインドでも採用する。 更に、倉庫は既存の選果施設に隣接して建設することで、選果したものをすぐに保管できるようにする。 インドは屋外がセ氏40度近くに上るため、庫内はセ氏17~22度設定で十分と判断。天井と屋根の間に空気層を設けて直射日光の影響を受けにくくすることで、空調効率が高まる上、結露やこれに伴うカビの発生を防ぐ。 また、今回の事業では、パック詰めといった流通加工も行う予定。西ベンガル州産をブランド化することで、付加価値と輸出ニーズの創出を図り、農家の所得向上につなげる。 一号倉庫は、西ベンガル州・コルカタの郊外で3月末に完成、第二弾はダージリンで建設する。同州北部で18年に10棟、19年に2棟建設する予定で、この計12棟について1月16日、建設に関する覚書を同州と締結した。18年末にはダージリンのシリグリに支店を置き、比較的近い地域のバグドグラには今後、検疫設備を設けて、収穫した農作物をヨーロッパや中東へ輸出することも見据えている。 川崎陸送は、一号倉庫をショールームと位置付け、18年秋に日本からの投資希望者向けツアーを計画。加えて、物流企業を対象とした倉庫建設投資ファンドを設立する方針で、例えば、紙製品などの他分野のノウハウ吸収も視野に倉庫建設への出資を募る。 従業員は現地で日本語を学ぶ人を紹介してもらい、既に採用が決まった人もいるという。従業員教育は倉庫が竣工した後に実施。流通加工をはじめとした業務内容だけでなく、日常的なポイ捨てといった現地の慣習も改善させていく。 【写真=建設中の第一号倉庫。後に西ベンガル州カラーに塗装】