高速道ワイヤロープ、設置区間で死亡事故ゼロ 設置後3~6カ月 車両接触は112件 短い橋梁でも試行へ
行政
2017/11/30 0:00
国土交通省は27日、東・中・西日本の高速道路各社が設置した車線区分柵(ワイヤロープ)の整備区間で、設置後3~6カ月に死亡事故が一件も発生していないことを明らかにした。高速道路の片側1車線(暫定2車線)区間での正面衝突防止対策として進めているが、重大事故の防止に効果があることを実証。これまでは先行して、全国12路線延べ113キロの土工(盛り土)区間に整備してきたが、2017年度中に短距離の橋梁(きょうりょう)8カ所にも試行設置する方針だ。(田中信也) 27日に開催した、有識者と国交省道路局、高速道路3社の保全担当部長らで構成する高速道路の正面衝突事故防止対策に関する技術検討委員会(桑原雅夫委員長、東北大学大学院教授)の第2回会合で明らかにした。 暫定2車線区間で、車両がセンターポールを乗り越え対向車線に飛び出す正面衝突事故が多発。これを踏まえ、技術検討委は16年12月の初会合で①盛り土区間にワイヤロープを試行設置②長さ50メートル未満の中小橋梁では設置・固定技術を開発した後、試行設置③50メートル以上の長大橋梁とトンネル区間での設置に向けて新技術を公募――する対策方針案を打ち出していた。 対策方針案を受け、高速3社は4~8月、道央自動車道、秋田自動車道、東九州自動車道など全国12路線の連続する盛り土区間の一部、延べ113キロにワイヤロープを試行設置した。「事故防止」「走行性」「維持管理」「緊急時対応」の観点から、冬期対策や緊急・消防活動への影響などを除く14項目を評価。27日の技術検討委で、評価結果を中間報告した。 事故防止に関しては、先行区間の対向車線への飛び出し事故は1件のみで、2人が負傷したものの死亡者はゼロだった。設置前の16年は1年間で発生45件、死亡7件、負傷6件。3~6カ月の調査結果のため単純比較はできないが、特に重大事故防止への効果が証明された。 一方、ワイヤロープへの接触事故は、パトロールで事後に判明したケースを含め112件に上った。接触により車両が大きく破損したケースも多く、一部の有識者委員から「車体巻き込みなどによる破損を軽減する必要がある」「ロープの位置をもっと低くすべき」といった指摘が上がった。 こうした課題を受け、道路局と高速道路3社は、5本のロープを束ねて巻き込みを防ぐ連結材の「試行導入を検討している」と説明した。一方、ロープの位置については「低くすると大型車の制御が難しくなる」と否定的な見解を示した。 このほか、1日平均の交通量が7千~8千台以上と多い区間で接触率が高くなることや、右カーブ(51%)、下り区間(54%)での接触事案が多いといった分析結果を紹介した。 また、中小橋梁への試行設置に向けては、橋梁床版(しょうばん)に影響を与えない方法を検証した結果、アンカー金具を舗装面に固定する方法を開発。これを受け、現在試行中の盛り土区間と接する8カ所で17年度内に設置する方針が決まった。 長大橋梁とトンネル区間については、技術公募を行った結果、5件を選定。12月からおおむね1年間、性能検証を行い、順調にいけば19年に試行設置する。