過積載取り締まり、荷主情報「聴取」来月試行 国交省、直轄国道対象に
行政
2017/11/13 0:00
国土交通省は12月から、直轄国道で車両制限令違反の基地取り締まりを行う際、過積載車両に対して荷主情報の聴取を試行する。得られた情報は、適正化事業実施機関(都道府県トラック協会)に提供。過積載に加え、過労運転違反も確認された荷主に対しては、荷主勧告制度に基づく協力要請書を出す。また、2018年1月からは、直轄国道を対象とした特殊車両通行許可の申請時に、荷主情報を記載してもらう取り組みを開始。記載があれば、優先的に特車許可審査を行うインセンティブを設ける。(田中信也) 過積載車両の取り締まりが強化される中、トラック運送業界は「(過積載は)荷主からの要求や非効率な商慣習も大きな要因」と指摘。全日本トラック協会(坂本克己会長)が16年、会員事業者を対象に実施した荷主に関するアンケート(回答538社)の結果では、「荷主から過積載の強要を受けた経験あり」と答えた事業者が82社(15%)に上った。 こうした課題を踏まえ、国交省道路局は荷主にも適切に責任を分担するため、特車通行許可申請時と違反取り締まり時という「入り口」と「出口」で、荷主情報の把握に踏み切る。9日に開催した社会資本整備審議会道路分科会基本政策部会の物流小委員会(根本敏則委員長、敬愛大学教授)で概要を明らかにした。 聴取は、車限令違反の疑いのある車両を誘導して実施する基地取り締まりで警告・措置命令を受けたドライバーを対象に、「荷主名」「荷主の業種」「荷主の関与や指示の有無」について回答を求める。12月から全ての地方整備局などで試行する。 なお、16年9~11月にも違反車両を対象に実験的に実施しており、ドライバーの5割が「荷主名」を、6割が「荷主の業種」を回答。ただ、「関与や指示の有無」については無回答だった。 一方、特車許可申請時の荷主名記載では、申請書に荷主の「社名」と「代表者名」の記載欄を設け、記載がある申請は10日程度、優先して許可審査を行う。まず北海道開発局が1月ごろから試行し、18年度中に全地方整備局などへ拡大する。 基地取り締まり時に聴取した荷主情報と、特車通行許可申請時の記載の後に違反通行したドライバーの提供情報は、地方運輸局などを通じ、適正化機関に違反情報と併せて提供する。巡回指導時の荷主情報の聴取で、過積載だけでなく過労運転などにも関連することが確認された場合は、当該荷主に取引先のトラック運送事業者が法令違反したことを通知し、再発防止に向けた協力要請書を出す流れだ。 試行は18年度も継続し、聴取・記載状況関係部局での荷主情報の活用状況などを検証した上で、同年度中の本格導入を目指す。 道路局では過積載の取り締まりを強化する一方、物流に配慮した対策を幅広く検討している。物流効率化の観点からトラックの大型化が進む現況を踏まえ、道路構造や危険防止に支障の無い区間について、制限値を拡大する「重さ指定道路」や「高さ指定道路」も含め、車両制限の在り方を再構築する新たな仕組みづくりを視野に入れている。小委の次回会合で、その構想を示す方針だ。 【写真=「聴取」は直轄国道での基地取り締まりが対象(イメージ写真)=一部画像処理しています】