日本梱包、省力化むけ車両大型化 独自規格23メートルフルトレ 福通がダブル連結トラ導入へ
物流企業
2017/10/02 0:00
ドライバーの不足感が強まる中、トラック業界では大型・長大トラック(トレーラ)の導入機運が一段と高まってきた。日本梱包運輸倉庫(大岡誠司社長、東京都中央区)は「独自規格」となる全長23メートルフルトレーラの試作車を製作し、本格運行に向けた取り組みを始めた。また、ヤマト運輸(長尾裕社長、同)では年内にも、全長25メートルの「スーパーフルトレーラ25」の運行を開始、福山通運でも全長25メートルの「ダブル連結トラック」の早期導入に向け本格的に動き出した。ただ、実際の運行・運用に当たっては、走行できる道路が限定されることや殊車両通行許可の取得に時間がかかるなどの「制限条件」も多く、今後、一気に普及・拡大していくかどうかは不透明だ。(高木明、高橋朋宏、田中信也) 先陣を切ってフルトレーラ化を推進しているのが、ニッコンホールデイングス傘下の日本梱包運輸倉庫だ。既に、全長21メートルフルトレーラを100台(セット)導入し、拠点間輸送の大量・省力化に役立てている。江原勝雅・執行役員自動車部長は「1回の運行で大型トラック2台相当分を運べるため、省人化効果が大きい」と話す。 中でも、定期便のNSC便(ニッコン・スマート・キャリー)は、岩手県北上市―熊本市(総延長1878キロ)を、計8人のドライバーが乗り継ぎながら南下する。一人当たりの走行距離約200キロを目安に中継基地を設け、それぞれ荷下ろし・積み込みを行うユニークな活用法だ。現在、自社の重量・容積・荷姿などに適合した全長23メートルフルトレーラの試作車を製作、特車通行許可申請を行っている。 一方、ヤマト運輸は東名阪の総合物流ターミナル「ゲートウェイ(GW)」間で輸送の効率化を進めるため、2016年度に全長18メートルのセミトレーラと21メートルのフルトレーラを導入したのに加え、国内初となる全長25メートルの新規格の長大連結トラック「スーパーフルトレーラ25」の運行を年内に始めることを、17年9月に発表した。 フルトレ―ラ25はロールボックスパレットを計38本(前方トレーラ18本、後方トレーラ20本)積むことが可能だ。「大型化で荷物量が一時的に増えても対応でき、メリットは大きい」(広報戦略部)。 ヤマト運輸では当面、2台を導入し、厚木GW(神奈川県厚木市)と関西GW(大阪府茨木市)の2カ所に配置。実際の運行に当たっては、同業他社のトレーラを連結して走行することも検討しており、業界全体の輸送の効率化にもつなげたい考え。5日に行われる関西GWの開所式で展示しPRする。 また、輸送モードの多様化の観点から、長大トレーラの活用を推進しているのが福山通運だ。現在、主要幹線でセミトレーラ(積載容積70立方メートル)を1日当たり数百台規模で運行しているが、中でも鉄道コンテナ利用では東京-大阪、東京-岡山・福山、名古屋-北九州・福岡で専用列車「福山レールエクスプレス号」を運行している。3線区の合計輸送力(往復)は大型トラック220台相当分となる。 福通では17年3月から、国土交通省が取り組む「21メートルダブル連結トラック実証実験」に参画しており、更なる長大トレーラの運行・運用を目指す。鉄道コンテナ輸送の積極活用は輸送力の安定確保といった観点から進めている。小丸成洋社長は「大型化で省力化が図れることは自明の理であり、環境にも優しい。近い将来には25メートルフルトレーラの本格運行も実現させたい」と意気込む。 業界関係者によると、国交省が実証実験中の21メートルダブル連結トラックの積載容積は、通常の大型トラック(58立方メートル)と比べて1.8倍の104立方メートルを確保でき、大量輸送が可能となる。しかし、実際の運行に当たっては、運行ルートが制限される他、特車の通行許可のリードタイムが4~5カ月にも及ぶケースが少なくないという。関係者らは「以前と比べれば改善されてきたが、トレーラ利用を促進するには更なる短縮化が必要だ」と訴える。 国交省がトラック輸送の省人化・生産性向上を図るため、新東名高速道路でダブル連結トラックの実証実験を開始したのは2016年11月からで、現在、日本梱包、ヤマト運輸、福通の3社が参加。17年度末までに検証結果をまとめ、18年度中には通行許可基準の車両長を最大25メートルまでに緩和する方針。 ヤマト運輸が新規格のスーパーフルトレーラの投入を発表したことで、実験が後ろ倒しになることも懸念されるが、「当初のスケジュール感で進めていきたい」(道路局)としている。 【写真=16年度導入した全長21メートルフルトレ(ヤマト運輸)】