厚労省、HACCP制度化へ調整 トラ業界 検査対象拡大を警戒
行政
2017/09/21 0:00
厚生労働省は、食品衛生管理の国際基準「HACCP(危害分析・重要管理点方式)」をフードチェーン(食品供給工程)に関わる全ての事業者に制度化するため、関係業界との調整を進めている。食品輸送を行うトラック運送事業者も対象になる可能性があるが、全日本トラック協会(坂本克己会長)はHACCP制度化について一定の理解を示しつつも、厚労省側に「統一基準を策定しても、トラック事業者に強要することはできない」などと指摘している。 厚労省は14日、食品流通の多様化・国際化などを踏まえ、食品製造・加工の国際基準として普及が進んでいるHACCPの衛生管理手法を取り入れ、フードチェーンを構成する事業者の自主管理を図る目的で、食品衛生法改正に向けた検討に着手した。 HACCPの制度化を踏まえ、34の営業許可業種の整理・見直しも併せて行う方針で、その「施設基準」を現在の条例から厚労省令に格上げするほか、営業許可対象外の業種に対しては、自治体が届け出を求める制度を創設する方針だ。 物流関係では、冷凍・冷蔵業(冷凍冷蔵倉庫業者)が許可業種に指定され、保健所による立ち入り検査が行われているが、食品を運搬(輸送)する事業者は原則、検査の対象外だった。だが、今回の食衛法改正では、営業届出の対象とすることや、冷凍・冷蔵業の対象範囲拡大なども検討されており、規制強化は避けられない情勢だ。 こうした中、厚労省医薬・生活衛生局の食品監視安全課の担当官は、食料品輸送での衛生管理の現状把握などを目的に1日、全ト協食料品部会の幹部と意見交換を行った。 この場で、食料品部会は「業界の統一基準として全ての関係事業者に強要することはできない」とした上で、HACCPの順守は「食品メーカーなど荷主の認証取得と、その運用状況に準拠することが大前提となる」と強調した。例えば、「土足で荷台に上がらない」ことを統一基準に定めたとしても、全ての事業者に守らせることは事実上、不可能に近い。 また、食品メーカーによって衛生管理の基準が異なる現状も指摘。温度帯などについての統一基準を、メーカ―側が策定する仕組みとするよう要望した。 HACCPの制度化を厳命したところで、荷主の方針・意向に左右されることの多いトラック事業者にとっては「絵に描いた餅」になりかねない。一律に制度化し、かつ検査の対象とされることを業界側は警戒している。(田中信也) 【写真=統一基準を定めたとしても全ての事業者が守ることは事実上不可能(イメージ写真)=一部画像処理しています】