物流業界/企業内託児所増加、コスト増も人手確保寄与 職場環境整備 保育料低く抑え
物流企業
2017/09/14 0:00
物流業界で、企業内託児施設を設ける会社が増えている。施設の建設や改修に費用が掛かる上、「福利厚生の一環」で保育料を低く抑えるため、持ち出しになるケースが多い。だが、人手確保にはつながっており、今後も物流業界で広がっていきそうだ。(河野元、小瀬川厚、高木明) マルソー(渡邉雅之社長、新潟県三条市)の子会社、ファースト・ブレイン(同)の運営する託児所は、順調に推移している。2月にマルソー本社に開設したが、9月1日には新潟市西蒲区の巻潟東SLC(ストラテジック・ロジスティクス・センター)内にもオープンさせた。新たな労働力の確保に寄与しており、時機が合えば更なる増設も検討していく。 内閣府が手掛ける企業主導型保育助成事業の補助を活用。本社構内の託児所は、7月に定員の12人に達した。内訳はグループ従業員の関係が9人で、このほかに一般の地域枠として3人を受け入れた。 新設の巻潟東も、同様の定員で申請。保育士4人を含むスタッフ5人で運営する。現在、会社関係で3人の子供が入所しており、一時預かりにも対応。日曜がセンターの稼働日に当たることから、開園は土曜を除く午前7時半から午後6時半までだが、延長も可能だ。 これらはグループの社会福祉法人三条福祉会(渡邉喜彦理事長)で、認可保育園を2カ所手掛けている経験を踏まえて着手。5歳児までケアできるが、主に産休後の従業員支援を目的としており、0~2歳児がメインになる。 ボルテックスセイグン(武井宏社長、群馬県安中市)も、保育時間を午前7時~午後6時半と長めに設定することで、子育て中の社員に配慮。土曜日の預かりも相談に応じるほか、半日や1日の一時預かりにも対応する。定員は11人で、現在6~7人を受け入れている。既存施設の改修といった4千万円の設備投資のうち、補助金で補てんできたのは1千万円だった。 カンダホールディングスは、岩槻物流センター(さいたま市岩槻区)の事務所棟内を改装し、8月1日に開設した。定員は19人。施設の改装に当たっては、国から経費の4分の3の補助を受けた。2018年2月には埼玉県に加須豊野台物流センター(加須市)がオープンするが、設計段階から保育所を組み込んだ。 保育料の全国平均は3万2千円だが、カンダホールディングスは月額2万円とし、周辺の施設の相場に比べて低く抑えている。この理由について、カンダコーポレーション(勝又一俊社長、東京都北区)の土屋洋一取締役(61)は「保育園の経営を目的としているのではなく、あくまで働きやすい職場をつくっていくための環境整備の一環のため」と話す。 ボルテックスセイグンも、当初は2万円にしていた。その後、認可保育所に移行したため、保護者の所得に応じたものとなっているが、従業員の場合は1万円を補助しているという。 ファースト・ブレインでは、グループ関係者については、給食やおやつ代を含む一切のサービスを5千円で利用できる。このメリットは大きく、入社の問い合わせが途切れなく入ってくる。同社は派遣事業も手掛けているため、まずは派遣社員として採用し、構内作業に携わって仕事を覚えてもらい、できれば将来の戦力として育てたい考えだ。 【写真=ファースト・ブレインの巻潟東の施設では、一時預かりにも対応】