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愛知労働局、大宝運輸の社名公表 制度拡大後全国初 違法な時間外労働「最長197時間」

行政

2017/09/07 0:00

 愛知労働局は4日、複数のドライバーに時間外・休日労働に関する労使協定(三六協定)を超える長時間労働をさせ、是正指導したにもかかわらず改善が見られなかったとして、「大宝運輸」の社名を公表した。厚生労働省が1月に社名公表制度の対象を拡大して以降、全国初のケース。対象拡大以前の事例を含めても、全業種を通して2件目となる。1カ月当たり80時間を超える違法な時間外・休日労働は最長197時間に及んだ。(奥出和彦)  大宝運輸は同日、社名公表の措置とともに、木暮康二愛知労働局長から是正指導を受けた。これを受け、小笠原忍社長らが名古屋市内で記者会見し、「社員や家族、取引先、株主、社会の皆さまに深くおわびしたい」と謝罪。その上で、「是正に向けて早急に改善策を断行したい」と決意を述べた。  同社は2016年12月、労働基準監督署による各支店への立ち入り調査で違法な時間外・休日労働が指摘され、17年2月には長時間労働削減に取り組むよう名古屋北労基署長から呼び出し指導を受けた。その後、他の支店でも調査が進められ、改善に至っていないとの判断から、今回の措置となった。  愛知労働局によると、対象となった愛知県、三重県などの4支店で、いずれも労働基準法第32条違反が認められた。「過労死ライン」と言われる1カ月当たり80時間超の時間外・休日労働があったドライバーは、4支店合計で84人。このうち100時間超は74人で、各支店の最長は、それぞれ197時間、165時間、129時間、134時間だった。  同社は問屋、店舗などへの食品輸送が主な業務で、4トン車を中心に400台程度保有。従業員との三六協定は、改善基準告示で定められた年間拘束時間の限度である「3516時間」を超えない範囲で、支店ごとに季節波動を考慮した形で締結している。このため、記者会見では「80時間超、100時間超の残業時間であっても、全てが三六協定に違反しているわけではない」と主張したが、該当する従業員については「三六協定に違反していた」との認識を示した。  長時間労働の改善策として15年から、最寄りの拠点間での配車変更や営業拠点の分散配置、採用活動の多角化、全社員を対象とした免許取得費用の全額補償、職場環境・賃金・労働条件の改善など内部改革を推進。これに加え、顧客への荷待ち時間短縮要請や一部顧客との取引解約、営業所の一部閉鎖、受注調整などを進めてきた。  こうした取り組みは一時的に成果を上げたものの、「定年を含めて従業員の退職が多くなっていた上、補充できず人手不足が常態化しており、抜本的な長時間労働の改善には至らなかった」と説明した。  改善措置として、既に小笠原氏を委員長としたプロジェクトチームを立ち上げており、今後は①時間短縮乗務員を含む採用活動の強化②乗務員の多様化及び教育③協力会社との連携強化④事務のIT(情報技術)化⑤付帯作業の削減による効率化――などを断行すると表明。  また、顧客に対しては、荷待ち時間短縮、受発注時間の繰り上げ・平準化、一部取引の縮小・解除を要請し、「経営の最優先課題として、断固たる意志で違法な長時間労働の是正に取り組んでいく」と強調した。 【写真=小笠原社長(左から2人目)ら役員が会見】





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