日陸、一気通貫体制を高度化 国内・海外事業が連動 産業構造の変化を踏まえ
物流企業
2017/08/14 0:00
日陸(能登洋一社長、東京都千代田区)は国内事業と海外事業を連動させたワンストップサービスを拡充する。化学品業界では、高付加価値品の生産が国内に回帰する動きがある一方で、汎用(はんよう)品の生産は海外シフトが一段と進展することが予想される。こうした産業構造の変化を踏まえ、同社は海外から国内への物流の要請に即応できる態勢を強化。一気通貫体制の高度化を図り、顧客ニーズを先取りする。(沢田顕嗣) 国内では、中部物流センター(愛知県弥富市)を18年1月に竣工させ、中部エリアにおける化学品物流を受託。危険品倉庫2棟(2千平方メートル)と一般品倉庫1棟(7130平方メートル)で構成するほか、立体自動倉庫を活用した省力化やセキュリティーの徹底も図る。常温帯の危険品に特化することにより、温度管理を要する危険品を主に扱う名古屋物流センター(東海市)と機能を分担。中部物流センターは需給動向に応じて2期工事も見据える。 また、7月にエヌアイケミカル(安昼浩一社長、千葉市美浜区)と業務提携契約を締結したことにより、ケミカルタンクとマルチワークステーションを新たに確保。更に、関東エリアにおける医薬品専用倉庫の新設と関西エリアにおける中継拠点の設置も検討している。輸送サービスは食油や味液、コーンスターチ、酒類などの食品にも注力するとともに、競合他社との連携による小口輸配送ニーズに対応。モーダルシフトの要請にも応えていく。 海外はアジアを中心とした事業展開に一段とギアを入れる。3月に台湾の台北市に支店を開設し、化学品の物流事業をスタート。8月末には韓国の合弁会社が常温の危険品倉庫(990平方メートル)と一般品倉庫(5300平方メートル)を新設するのに続いて、18年中には2期として定温の危険品倉庫(990平方メートル)を立ち上げる。 併せて、ASEAN(東南アジア諸国連合)の経済連携もにらんで、グループ会社のベトナム駐在員事務所の現地法人化も視野に入れている。シンガポールやタイの現法とも連携しながら、日本と同レベルの高品質な化学品物流サービスの提供を構想している。 このほか、中国の内陸部への進出及び米国での新たな需要創造の可能性も探っていく。 事業の拡大と並行して、新たな戦力を呼び込む施策も実施。16年10月から人事評価の基準を従来の年功序列から能力重視に改めたのを契機に中途採用にも力を入れる。ダイバーシティー(多様性)経営も推進しており、国内で採用した中国、韓国、ベトナム、タイ、台湾の社員が在籍している。 4カ年の中期経営計画の終年度である22020年9月期のグループ業績について、売り上げは500億円(17年9月期は350億円を見込む)、経常利益は16年9月期比で1.5倍に拡大させる。 山之内純・取締役専務執行役員事業本部長は「危険物のスペシャリストである強みを発揮し、伸びる分野をいかに拡大していくか。それにはトータル提案力がカギを握る。国内外の成長分野に焦点を当てるとともに、点を線・面に展開していくことにより、顧客に包括的なサービスを提供したい。一歩先を行くことで先行者利益を取ることもできる」と話している。 【写真=韓国の合弁会社が常温の危険品倉庫と一般品倉庫を新設(完成予想図)】