自動隊列走行、国交省がヒアリング トラ業者&メーカー 車型・積載量を踏まえ編成 高速合流部が情報提供で支援
行政
2017/06/12 0:00
国土交通省は、トラックによる自動隊列走行を事業として成立・継続させるため、トラック運送事業者や大型トラックメーカーのニーズを把握し、必要な要件、枠組みを固める方針だ。車両の編成数や走行する車線、事業形態などを関係者で速やかに検討し、隊列走行の将来像を共有。年明けにもスタートする実証実験に生かしていく。(田中信也) 8日開催した国交省自動運転戦略本部(石井啓一本部長、国交相)の会合で、自動運転技術の導入による物流の生産性向上に向けた今後の方向性として示した。 政府の未来投資会議(安倍晋三議長、首相)が示した「完全自動運転実現に向けた実行計画」で、17年度中に後続車有人、18年度から後続車無人のトラックによる自動隊列走行の実証実験に取り組み、20年に新東名高速道路で実施、22年には東京―大阪で事業化の工程表(ロードマップ)を提示。これを受け、実証実験を推進する国交省と経済産業省は、車両走行技術の開発や道路インフラなど事業環境の検討を進めている。 隊列走行の実現に向けては、自動車メーカーに技術開発を促すとともに、ユーザーとなるトラック運送事業者の意向・ニーズを把握し、事業化に必要な要件、枠組みを検討する必要がある。 5月26日にヤマト運輸(長尾裕社長、東京都中央区)、日本通運、佐川急便(荒木秀夫社長、京都市南区)の物流大手3社と、日野自動車、いすゞ自動車など大型トラックメーカー4社に対するヒアリングを実施し、意向を聴取した。 メーカーから車両編成について、ドライバーの監視範囲や技術的可能性に関する指摘があり、トラック事業者からは採算性など様々な観点から意見が出た。走行車線や隊列を形成・解除するエリアについては「3車線のうち、どの車線を通行するかで3通りの案がある」と行政側が説明した。 事業形態に関しては、1社での運行から共同運行まで視野に入れている。しかし、車両の配置に関しては、安全対策の面から「車型や積載量を踏まえ、重い順に編成を組む」などの考え方を共有。必要となる技術やインフラについては、例えば「一番左側の車線を実験車両が通行すれば、車線変更が不要になる。半面、インターチェンジ(IC)合流部で一般車両に影響されずに、安全に本線に入れる対応策が必要」といった課題が浮上した。 なお、IC合流部での対応に関しては、合流先の車線の交通情報提供など道路側から支援する仕組みづくりに向け、17年度から官民共同による研究に着手する。 移動サービスの向上を目指した実証実験では、全国4カ所でラストワンマイル自動運転の安全性を検証している。また、全国10カ所で中山間地域の道の駅を拠点とした実証実験を順次開始する。このほか、新規事業として①ニュータウンでの多様な自動運転サービス②ガイドウェイバス(名古屋ガイドウェイバス)を活用した基幹バスでの自動運転技術導入――の実施を明らかにした。 石井国交相は、隊列走行について「(トラック)事業者とメーカーの考えを聞き、具体的な課題が明らかになった。高速道路合流部の情報提供による支援といった新たな施策を具体化するとともに、(明らかになった)課題を踏まえた必要な対策に取り組む」よう指示した。 【写真=「課題を踏まえた必要な対策に取り組む」よう指示する石井国交相】