名古屋圏、物流施設開発が活発化 1~3月に大型5棟が竣工 テナント決定済み8割
行政
2017/06/08 0:00
名古屋圏で延べ床面積5千坪以上のマルチテナント(複数企業入居)型の大型物流施設の開発・供給に向けた動きが活発になってきた。2016年までは低空飛行が続いていたが、17年に入ってからは、1~3月期に5棟(総延べ床面積17万平方メートル超)が竣工。テナントも大半の施設で8割程度が「決定済み」と、状況は一変した。ディベロッパーなど業界関係者らは「潜在需要は強いものがある。名古屋圏では当面の間、底堅い動きが続く」と読む。(井内亨) シービーアールイー(CBRE)は、中部国際空港(セントレア、常滑市)エリアに「セントレアロジスティクスセンター」を構える。セントレアが旅客と同時に貨物の誘致に注力する中、CBREでは事務所のみの賃貸やワンフロア1万1900平方メートルの物流施設を供給している。 また、物流適地の小牧エリア以外に、最近では名古屋市内へ進出する例も出てきた。名古屋市街地や名古屋港、更に自動車メーカーの関連会社や航空機関連の工場などから近く、また、名鉄(名古屋鉄道)やJRの駅からも近いため、人手確保に優位な立地条件だ。 2月に竣工した大和ハウス工業の加福町物流センターⅡ(名古屋市南区)に続き、5月末にはESR(スチュアート・ギブソン社長、東京都港区)のレッドウッド名古屋南ディストリビューションセンター(名古屋南DC、南区)が竣工。地上4階建てで、延べ床面積は3万6030平方メートルと、ESRとしては愛知県で初めての物件となる。同社の松波秀明取締役は、この時期の進出について、「首都圏と大阪圏に比重を置いていたため、名古屋圏への進出が遅れ、更に適地がなかなか見つからなかった」と説明する。 大型物流施設の建設需要が高まる一方、ESRのように、「土地の確保が難しい」と頭を抱えるディベロッパーは少なくない。一般的には工場閉鎖の土地を活用するといった方法が主流だが、名古屋圏ではこうした事例があまり見られない。老朽化に伴う建て替えの需要があっても、一時避難拠点が見つからず、建て替えられない事例もあるようだ。ESRの松波氏は「こういった話は多いと思う。名古屋南DCは工場閉鎖により土地を確保できたが、たまたま売りが出た」と明かす。また、大都市圏にもかかわらず、農業産出額が全国7位の農業大国で、市街化調整区域に指定されているエリアが多く、「物流適地」を見つけにくい状況だ。 地元の関係者によると、08年のリーマン・ショック以降、景気の冷え込みや土地の確保難などから進出するディベロッパーは少なく、大型施設の開発・供給はあまり進まない状況が続いていた。しかし、景気回復などに伴い、高機能の物流施設に対するニーズが高まり、一時期、空室率が「0%」といった状況に陥った。 今後の大型物流施設の立地・開発について、CBREの石川治夫・インダストリアル営業本部長は「名古屋市内進出のように、供給側の選択肢は広がった。新東名高速道路、新名神高速道路が開通すれば、南側を通る伊勢湾岸自動車道を活用して直線的に関西方面へ行けるようになる。そうなれば、東側の東海市や大府市への進出ニーズも高まるのではないか」と予想している。 【写真=中部国際空港に構えるCBREのセントレアロジスティクスセンター】