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近畿圏高速道路/新料金体系移行、事業者「複雑すぎる」と不満

産業

2017/06/01 0:00

 近畿圏の高速道路会社は3日午前零時から、新たな料金体系へ移行する。阪神高速道路(幸和範社長、大阪市中央区)は、西日本高速道路(石塚由成社長、北区)などの大都市近郊区間と同じ料金単価(1キロ当たり36.6円)と車種区分(5車種区分)を採用。最低料金が引き下げられ、短距離利用では安くなるものの、上限額は引き上げられるため、運送事業者からは「実質値上げではないか」といった不満の声も聞かれている。(小菓史和)  京都線以外の阪高各線と、西日本高速が管轄する西名阪、近畿、阪和の各自動車道、第二京阪道路、京滋バイパスが新料金へ移行。均一料金から対距離料金となる近畿道と阪和道では、激変緩和措置として、道路ごとに上限料金(普通車750円)と下限料金(270円)を設定した。両道を連続で利用する場合にも、上限料金(1020円)が適用される。  名阪も料金区間は廃止、現行料金を上限とする対距離制となる。現在、4車種区分となっている近畿道、阪和道、西名阪道は、いずれも他の路線と同じ5車種区分に整理・統一される。  ETC(自動料金収受システム)利用の料金でみると、近畿道の吹田ジャンクション(JCT、大阪)―門真インターチェンジ(IC、同)で大型は770円から750円に下がるが、普通は510円から520円に、中型も510円から540円にそれぞれアップする。  阪和道では、堺IC―岸和田和泉IC(大阪)で、普通が510円から480円へ、大型も770円から690円へいずれも引き下げられるが、中型はこれまでの普通と同額の510円となる。  これに対し、西名阪の藤井寺IC(大阪)―柏原IC(同)は、普通が410円から320円、中型も410円から360円、大型は570円から430円といずれもダウン。三つの料金区間に分かれていた第二京阪道も対距離制に移行するが、巨椋池IC(京都)―門真ICだと、現行料金の普通1030円、大型1590円のまま変わらない。  阪高は、これまでの普通車と大型車の2車種区分を軽自動車等、普通車、中型車、大型車、特大車の5車種区分に変更。普通を1とした場合の車種間の料金比率を中型1.2(激変緩和措置で2021年度までは1.07)、大型1.65(現行2.0のため措置無し)、特大2.75(2.14)に設定している。このため、大型車両の多い事業者にとっては負担増となる。  下限料金は普通300円、中型310円、大型390円、特大360円と、現行の普通510円、大型1030円より低く設定。しかし、上限料金は現行の普通930円、大型1850円に対し、普通1300円、中型1380円、大型2040円、特大2600円に引き上げられるため、長距離利用の多い利用者は負担が増える。  「実質値上げ」との批判に対し、阪高では「大型の車両、長距離の利用になるほど道路に与えるダメージは大きい。受益者負担という観点から、不公平とは考えていない」と説明する。  一方で、新たな割引制度もスタートする。大阪都心部(阪高1号環状線の指定出入り口)を発着地とする場合、第二京阪、西名阪や第二阪奈、南阪奈の両有料道路との間で、複数あるルートのどれを経由しても最も安い料金を適用する「大阪都心流入割引」を新設。例えば、第二京阪の枚方学研IC(大阪)からだと、普通車で最大450円、第二阪奈の壱分IC(奈良)からは最大810円それぞれ安くなる。  同割引を利用すれば、料金負担が増えることなく、渋滞をう回できるため、道路会社側は「交通流を分散させ、混雑を緩和する効果がある」と強調する。  こうした割引や料金計算方法は、全てETC利用が前提となるため、阪高では非ETC車への車載器導入を促す助成制度を新設。ETC車載器を持たない利用者(法人を含む)が2.0対応車載器を購入する際、アンケートに回答することを条件に1台当たり1万円、計5万台分の助成を行うもので、4月からスタートしている。  新たな料金体系は、対距離制を原則としているものの、「複雑すぎて分かりにくい」という印象が強く、運送事業者からは「料金が高くなるのか、安くなるのか、よく分からない」といった声が多く聞かれ、「上手にだまされているような気がしてならない。上限料金の設定があるとはいえ、実質値上げでないか」との手厳しい指摘もある。  とりわけ阪高については、車種区分の変更に伴い、これまで普通車料金だった4トン車が中型車料金となることに対し、「値上げ以外の何ものでもない」と不満を漏らす事業者が多い。  大阪府貨物運送協同組合連合会の中川才助会長(73)は「とにかく、分かりにくいの一言。料金が上がるのか、下がるのか、利用区間別にいちいち試算しなければはっきりしないので非常に面倒。シームレスというのなら、もっと分かりやすくシンプルな料金体系にすべき」と苦言を呈する。  更に、大阪都心流入割引の適用は32年3月までで、今回の変更に合わせて設けられる割引や優遇制度のほぼ全てが期間限定となっている点にも留意しておかなければならない。大口・多頻度割引制度の最大5割引きも、現在のところ18年3月で終了とされている。市民生活や産業活動を支える運送事業者にとって、より分かりやすく、利用しやすい料金体系の実現を、今後も業界を挙げて求めていく必要がありそうだ 【写真=批判に対し、阪高では「受益者負担という観点から、不公平とは考えていない」と説明(イメージ写真)】





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