取引労働改善和歌山協/実証実験、拘束時間を大幅削減 2泊3日→1泊2日
団体
2017/04/03 0:00
【和歌山】トラック輸送における取引環境・労働時間改善和歌山県地方協議会(辻本勝久座長、和歌山大学経済学部教授)は3月23日に開いた会合で、輸送中の拘束時間を大幅に削減するパイロット事業の成果を報告した。荷主及び実運送事業者の優れた人材とパートナーシップ構築により、長時間労働の抑制を実現。成功事例として、業界の機運を高める波及効果に期待が高まった。(渡辺弘雄) 2016年度は対象集団に発着荷主として橋りょうメーカーの高田機工和歌山工場(海南市)と同社工事部門、実運送業者に西日本建設物流(渡辺将太郎社長、和歌山市)を選定。取り組みでは、出発と到着の実態調査に問題が無かったため、輸送中の拘束時間削減に的を絞って着手した。 横幅が2500ミリ以上ある建設部材の輸送は、高速道路を使用できない。一般道でも特殊車両通行許可による午後9時から午前6時までの時間帯制限を受けるため、ドライバーの拘束時間が長引く2泊3日運行にならざるを得ない現状を課題に挙げた。 荷主の設計と物流の両担当者が連携して、改善方策を検討。24時間通行可能な高速道路の利用をポイントに、設計変更による建設部材の寸法見直しに踏み切り、幅3100ミリ、高さ4150ミリの部材を幅3千ミリ、高さ4100ミリ以内に収めた。 この結果、高速道路の通行許可、一般道の時間制限も無くして1泊2日運行を実現した。 部材の寸法は21種類に及び、製品特性上の問題で幅3千ミリ、高さ4100ミリを超える5種類の部材は、従来通り時間制限のある一般道路の通行となっている。 実証実験は、群馬県の大正橋側道橋での上部工桁製作架設工事と、鳥取河川国道事務所による鳥取西道路での河内川橋鋼上部工事の輸送業務で行った。 輸送ルートは、高田機工和歌山工場から大正橋までが中央自動車道などを利用した670キロ、国道1号など一般道753キロ。河内川橋間では高速道路など利用309キロ、国道1号など一般道利用325キロの4コースで検証した。 搬入車両は、中低床、高床のトレーラ27台、10トントラック6台で、改善策の導入前後の時間を比較してデータを収集した。 運行距離と拘束時間の短縮は、大正橋のケースで走行距離80.75キロ、輸送5時間。河内川橋のケースでは、走行距離16.35キロ、輸送5時間、積み込みから取り下ろしに至っては、大正橋19時間25分、河内川橋24時間と劇的な改善を遂げた。 成功要因には、物流に精通した優れた人材とパートナーシップを挙げている。特に、自ら足を運んで輸送現場を把握したり、安全運行に対する各部門の意見を輸送計画に随時反映させたりするなど、荷主の物流担当者の真摯(しんし)な姿勢が決め手となった。 実運送会社も荷主と安全運行、高い輸送品質の実現に向けてベクトルを合わせながら長時間労働の抑制に努めたことを評価した。 辻本座長は「かなりの成果が得られた。荷主、物流事業者の緊密な連携が効いた」と締めくくった。 和歌山県トラック協会の竜田潤三会長は「全国でも有数の成果が出た。当初は対象集団の選定が難航しただけに感慨深い。貨物の設計変更まで踏み込んだ担当者の熱意が成功の原動力だ。この事例の意義は非常に大きく、取引環境や労働時間短縮への弾みとなる」と期待を寄せた。 17年度のパイロット事業については、新たな対象集団として県を代表する地場産業の農産物をターゲットに選定を進めていく。 【写真=業界の機運を高める波及効果に期待】