農産品物流効率化、パレット活用など周知 方向性を取りまとめ
行政
2017/03/23 0:00
農林水産、経済産業、国土交通の各省は21日、農産品物流の改善・効率化に向けた方向性を取りまとめた。労働力不足が深刻化する中、作業負担の大きい農産品の物流では、ドライバーの確保が更に困難になるとの問題意識を共有。持続可能な物流の実現のため、パレットの活用や共同輸送の推進、商慣行の見直しなどの取り組みを各省が周知・啓発するとともに、支援施策を講じていく方針だ。 政府の「農林水産業・地域の活力創造プラン」に基づき、農産品物流の効率化によるコスト削減の取り組みを進めるため、関係3省は2016年12月に農産品物流対策関係省庁連絡会議を設置。今回の会合では、農産品のサプライチェーン(供給網)を構成する各関係団体の意見も踏まえ、最終合意した。 トラック業界の高齢化が進む中、労働の負担が大きい農産品を運ぶドライバーがこれ以上不足すると、「農産品の物流が立ち行かなくなる可能性がある」と指摘。生産・出荷、卸売、小売の関係者が物流事業者と緊密に連携し、トラック輸送への負荷軽減、物流効率化を図ることで「持続可能な物流が実現できる」とし、各者がウィンウィンの関係となるため、取り組みの方向性として「負担と受益を分かち合う」ことを打ち出した。 なお、各者が受けるメリットとして、物流事業者が長時間労働、過重労働、労働力不足の解消、生産・出荷関係者は安定的な出荷や新たな販売に必要な物流の安定確保、卸売・小売の関係者については安定的な配送、出荷、商品の確保――を強調。更に、生産・出荷、卸売、小売に共通するメリットとして、物流コストの最適化と、効率的な運用による収益性の改善、生産性の向上を挙げている。 課題の解決に向けた具体的な取り組みでは、ドライバーの負担が大きく、効率の悪い手積み・手下ろしに代わり、パレットやフレコンなどの活用を提言。レンタルパレットによる一貫パレチゼーションの事例や、流用・紛失の防止に向けた関係者ごとの行動規範・規格の統一などの取り組みを示した。 また、出荷日が毎日変動して適正配車が困難なことから、課題の解決が期待される取り組みとして、ICT(情報通信技術)による効率集荷システムの実用化を紹介した。 少ロット輸送による非効率な作業の改善、長距離輸送でのドライバーの長時間拘束の解消に向けては、①小ロットの農産品を広域物流拠点に集積するストックポイントの設置②トラックの共同利用・中継輸送③帰り便の活用――といった共同輸送のほか、鉄道・船舶へのモーダルシフト、物流拠点でのトラック予約受け付けシステムの導入などの取り組みを示した。 更に、注文が多いため「少ロットの多頻度配送が多くなる」として、商慣行見直しの必要性に触れた。小売業による発注頻度の低減、発注ロットの拡大、発注時刻の前倒し、納期の緩和などにより、トラックの運行回数削減や積載効率向上、効率的な配車、手待ち時間の削減などが可能となり、「物流効率化やドライバーの労働環境改善などが物流コストの削減に効果を発揮する」と強調。その上で、先進的な事例を取り上げた。 会合では、取りまとめを受けて関係団体の代表者が発言。全日本トラック協会(星野良三会長)の福本秀爾理事長は「今回の取りまとめに期待している」とした上で、①関係者による協議の場の常設②輸送資機材の効率化(パレットの規格統一など)③関係者による受発注情報の共有化――を要望した。(田中信也) 【写真=今後、ドライバーの確保が更に困難になるとの問題意識を共有】