山藤運輸、田畑の耕起作業始動 子供むけ物流授業計画
物流企業
2017/03/09 0:00
【宮城】山藤運輸(佐藤一四郎社長、宮城県南三陸町)が、新たな地域貢献事業で復興をけん引する。これまで、南三陸町が掲げるバイオマス産業都市構想関連の輸送に尽力してきたが、17年度からは更に、田畑の耕起作業を本格的に始める。地域の子供たちを対象とした物流の授業も計画。高齢農家の支援や未来のドライバー確保に向け、地域課題解決の事業化を加速させていく。 バイオマス産業都市構想の柱となっているバイオガス事業では、生ごみを有効活用した発電と併せて、途中過程で生成される液体肥料を使って農作物を栽培し、新たな産業の創出と地域循環による持続可能な社会の実現を目指している。同社では2014年秋から試験的に液肥散布作業を開始し、15年に散布車を導入して積極的に進めてきた。このほか、液肥と余剰汚泥の収集・運搬、もう一つの柱の木質ペレットの輸送も請け負う。地域密着型の事業展開が評価され、全ト協が主催する青年経営者等による先進的な取り組みに対する顕彰で、16年度に銅賞を受賞した。 こうした業務に加え、17年度には田起こしなどの耕起作業をスタートさせて、農業関連のサポートに力を入れる。その背景にあるのは、農家の高齢化だ。昨年の春に液肥散布を行っていると、農家から「田起こしをしたいが、人手が足りない」「年老いた体が、いうことをきかない」といった悲痛な声が佐藤克哉常務(34)の耳に入ってきた。「地域と共に成長する企業」を理念に掲げる同社は、早速行動を起こす。春は借り物の農業用トラクタで急場をしのいだが、9月には自社専用に1台購入。ノウハウを蓄積し、今春に備えた。収穫した作物をブランド化し、安定的な販売を確立する成長戦略を描く。 バイオマスの考え方を町内に浸透させるため、昨年から同町の若手経営者などの有志が小中学校に出向いて授業を行っている。佐藤氏もそのメンバーとして参加。紙芝居を見せたり、パワーポイントを使った授業、液肥散布の実演などを実施した。食糧が生ごみや排せつ物となり、肥料から食べ物が作られる循環の考え方を教える中で、同時に物流の重要性も訴えていく。「循環を実現するために、物流が深く関わっていることをぜひ知って欲しい。地方創生における運送会社の立ち位置はどこなのか。また、できることは何なのか。地域が活性化すれば、自ずと会社も良くなる。サケのようにいったん地域を離れた若者が、戻って来てくれるような仕組みにできれば」 (今松大) 【写真=田畑の耕起作業で高齢農家を支援】