消防庁、大型物流施設を調査へ アスクルロジパーク火災受け 国交省と検討会発足
産業
2017/03/09 0:00
アスクルが運用する「アスクルロジパーク首都圏」(埼玉県三芳町)の火災は、鎮火するまで12日かかった。長期化した要因として多くの憶測が飛び交う中、消防庁は2月28日付で、全国の消防に延べ床面積5万平方メートル以上の倉庫への立ち入り検査を求める通知を出した。高市早苗総務相は3日の閣議後の記者会見で、「消防庁と国土交通省が共同で、有識者等による検討会を14日に開催する」と表明。物流施設ディベロッパーからは、規制が厳しくなればコストが膨らむ――といった声が上がっている。 火災が発生したのは2月16日。原因は確定していないが、廃棄用段ボール置き場で作業中のフォークリフトのタイヤが段ボールの上で空転して発火した――との証言があるという。内部構造が複雑なことや、窓が少ないことで、消火活動は長期化。同社は出荷を停止し、近隣を中心とした他の物流センターから発送するなどの対応を取った。鎮圧したのは16日で、鎮火したのが22日と、鎮圧まで6日間、鎮火までには12日間を要した。 作業員2人が一時入院、近隣の6世帯16人に三芳町から避難勧告が発令されたが、死者は出なかった。延べ床面積7万1千平方メートルのセンターは、4万5千平方メートルが焼損し、被害額は120億円以上に上った。現在、国土交通省と消防庁をはじめとした関係機関は、現場での原因調査などを実施しており、結果を踏まえ対応を検討する。 今回の一件を受け、物流施設のディベロッパーの多くは、今後の動向をみながら対応を考えなければならない――と、政府の対応を注視している。消防法、建築基準法の改正などにより耐火性能の要求基準が高まれば、建築コストの増加や構造物の補強といった対応を強いられる可能性があり、不安視する声は少なくない。また、消防隊員が突入するための「非常用進入口」について、「今後は設置箇所が増えるのではないか」との見方も出ている。 消防庁は消防用設備の設置状況や管理状況などを把握するため、全国の消防に実態調査を要請。施設用途や階数及び窓が無い階数、消防用設備の設置状況などの基本情報のほか、消火器や防火シャッター、スプリンクラーの設置状況に関する違反は無いか――など細かく調べる。回答期限は、消防本部から都道府県は17日、都道府県から消防庁では24日と設定。また、14日には国交省と有識者検討会を立ち上げ、火災が長期間にわたって大規模に延焼した要因などを究明する。(井内亨) 【写真=内部構造が複雑なことや窓が少ないことで、消火活動は長期化】