運賃・料金/範囲明確化、「積み込み・積み下ろし」懸案 一定の線引き求められる
行政
2017/02/27 0:00
国土交通省が進めている、トラック事業の運賃と料金の範囲明確化に関する検討で、積み込み・積み下ろしの取り扱いが懸案となっている。以前から料金設定のある車両留め置きや、別建てが一般的な高速道路利用などの一方、車両への積み込み・積み下ろしは認可運賃時代から「運賃に含むか否か」の明確な定義が無く、業務形態や品目、商習慣を踏まえ、個々の判断に委ねられてきた為。検討会の最終取りまとめに向け、一定の線引きが求められるものの、定義付けは最大の難関となりそうだ。(田中信也) 運賃・料金の明確化は、荷主などから運送以外のコストを適正収受する方策として、トラック運送業の適正運賃・料金検討会(藤井聡座長、京都大学大学院教授)が取り組んでいる。 2016年12月の第2回会合で、事業者ごとに差異がある運賃と料金の区分を整理するため、発荷主の倉庫での荷物の取り出しから発送先での検品・仕分けまでの一連の業務フローを基に「どこからどこまでが運賃で、何が料金か」の定義付けに向けた議論をスタート。また、標準貨物自動車運送約款や書面化推進ガイドラインでの運賃・料金の位置付けも踏まえ、認識の共有化を図った。 今月20日の第3回会合でも引き続き検討が行われ、「運送と役務の範囲」「付帯業務・車両留置料の定義」などの論点を整理。最大の懸案として「積み込み・積み下ろしは運送の範囲か」が浮上した。 標準運送約款をみると、「荷物の積み込み・積み下ろしは当店(輸送事業者)の責任においてこれを行う」(17条)としている。一方、収受方法については「貨物を受け取る時までに、荷送人(荷主など)から運賃、料金などを収受する」との記載があるのみ。 また、03年4月の「運賃料金の事前届出の撤廃」以前に出されていた「区域トラックの運賃適用方」には、「国際大型コンテナ」「鋼材」「馬匹」「タンク車」など10種類の特殊貨物輸送の別建て運賃料金や、車両留置料がタリフ(運賃・料金表)として存在。半面、積み込み・積み下ろしに関しては、運送ごとに業務実態が広範かつ多岐にわたるため、運賃に含めるかも含め相対で設定――といったあいまいな位置付けにとどまっている。 だが、「車上受け・車上渡し」というトラック輸送の本来の原則を大きく逸脱した荷役作業を荷主から強要されるケースの多い現況から、国交省は待機時間が対象となる車両留置料の「復活」とともに、「積み込み・積み下ろしの範囲を明確化」(自動車局貨物課)する方針だ。 適正運賃・料金の検討に当たって全国のトラック事業者に実施したアンケート結果のうち、「積み込み・積み下ろしの費用収受」に関する回答(複数回答)は、「運賃に含む形で収受」が43.5%と圧倒的に多く、「運賃とは別建てで収受」は6.4%に過ぎない。また、「十分に収受できていない」も20.6%と多い。 半数以上が相当する費用を収受できているものの、より実効性を高めるためには、認可制の時代のような強制力のある料金は事実上不可能でも、一定の線引きが求められる。ただ、指針であっても個々の運送の業態や品目、商慣行の違いから、範囲の定義付けは難しく、5月か6月に予定している検討会の最終取りまとめに向けての最大の難関となりそうだ。 【写真=適正運賃・料金検討会で最大懸案として浮上(今月20日の第3回会合)】