トランスポートラン、中小向けJIT目指す 「車両価値創造」進める
物流企業
2017/01/30 0:00
【京都】トランスポートラン(建野泰正社長、京都市右京区)は2016年、創業20年を迎えた。軽貨物自動車運送事業からスタートし、2002年に一般貨物運送事業に進出、その後、冷蔵・冷凍・常温の3温度帯の一時預かりをはじめ、飲料や販売の資材販売、仕入れ管理請け負い、情報管理業務の開始など、3PL(サードパーティー・ロジスティクス)まで業容を拡大。目指すは「中小零細企業向け、JIT(ジャスト・イン・タイム)物流」だ。(落合涼二) 建野社長(45)は大学卒業後、地元運送会社で2年間修行し、25歳で独立。親類には会社経営者が多いらしく、近江商人が掲げた「売り手良し、買い手良し、世間良し」の三方良しを基に、「従業員の物心両面の幸せ、得意先の発展、社会の発展」をスタンスに置く。 「最近はコンプライアンス(法令順守)を守らなければ、企業の存続はあり得ない。長時間労働を抑制するとともに、給与体系を良くするには、60歳以上のシルバー人材活用も一つの手段。また、3、4時間といった限られた時間でのニーズもあり、いろいろなパターンを組み合わせれば、可能性は限りなく広がる」 一般貨物自動車運送では、2トン車をメインに京都、大阪で専属配送を手掛ける。また、軽貨物は、少量の荷物や納品先の道路が狭い場合に活用本社敷地内(660平方メートル)に併設する3温度帯の物流センター(330平方メートル)は、ピッキングから流通加工、発送までを一貫して行う機能を持つ。 中学校や幼稚園向け給食の配送で培ったノウハウを生かし、京都のロケ弁提供で成長している会社から、在庫管理、流通加工、配送を一貫して任された。お弁当の具材、弁当箱といった包装資材データ状況を無料のクラウドシステムにアップ。お店、仕入れ先とリアルタイムに情報共有する仕組みを整えた。 お店側は必要な材料を必要な数量オーダーすれば、トランスポートランが素早く届けるJIT物流を構築。不足があれば、少量でも即届ける。 建野氏は「京都市内には小さなお弁当屋、文房具屋が多く、そのような機能を望んでいる。大手企業では採算が取れないかも知れないが、地元に密着した我々だからこそ提供できるサービスがある。運送会社はモノを運ぶだけではダメ。ドライバー不足が深刻化する中、『車両価値創造業』という定義で、事業を推進していく」と強調する。 人材教育では、受け身の社員が主体性を持って行動できるよう変えることに注力する。「人は、もともと主体的だが、様々な経験を積む中で、引っ込み思案な性格になったり、積極的になったり分かれていく。ドライバー教育でも、本人に加え、家族や子供にも思いが届くような言葉を伝えている」 ドライバーが入社したら、まず一冊の大学ノートを渡す。業務終了時に感想を自由形式で記入してもらう。それに管理職が順番で毎日返事を書くスタイルを20年間継続する。 「手書きすることで漢字の練習にもなる。従業員の誕生日には手書きの手紙を送るようにしている。『思い』を感じて欲しい」 一方、無料通話アプリを活用したリアルタイムな報告・連絡・相談も心掛ける。また、荷主企業からドライバーが褒められた時などは、メールで全社員共有。本人がうれしいだけではなく、他の社員の刺激にもつなげるためだ。 建野氏は「20年前に創業した会社。将来にわたり永続させていくためにも、労働環境を整え、給与水準を上げていきたい」と話している。 【写真=3温度帯物流センターでは、ピッキングから流通加工、発送までを一貫して行う】