宮崎ジャパンエキス、改善基準厳守へ一丸 キッチンタイマー利用
物流企業
2017/01/12 0:00
【宮崎】ジャパンホールディングス(古賀正三社長、福岡県宇美町)グループで、長距離輸送を担う宮崎ジャパンエキスプレス(高木晴輝社長、宮崎市)では、改善基準告示を厳守した経営で、南九州から地元産の食品を関東の大消費地まで届けている。組織が一丸となって労働時間短縮とドライバーの生産性向上に取り組み、安全安心な長距離輸送で地元経済の発展に寄与していく。(上田慎二) 2012年7月、連続運転や休息不足で行政監査を受けたのをきっかけに、労務管理の抜本的な改革に着手した。売り上げを重視した結果、走れば走るほど燃料費、人件費がかさみ、労働時間も増える悪循環にあった。 関東、関西などの大消費地から遠い宮崎県は、道路網の未整備や鉄道、海上輸送の脆弱(ぜいじゃく)さから、長距離輸送の事業者にとって条件が厳しい。古賀社長(40)は「社内に『改善基準告示は守りたくても守れない』という意識が強かった」と明かす。 コンプライアンス(法令順守)が徹底できなければ会社は倒産する――。監査を機に、法令を100%守ろうと全社員が決意。安全、給与、休日、健康管理など働き方に対する意識を根本から変えて、法令順守のために必要な社内体制の整備を進めた。 幹部自ら荷主企業を訪ね、コンプライアンスの重要性を説き、適正運賃収受や発着時間の調整、手待ち、荷待ち時間の削減を提案。集荷時間を早めることが難しい青果物輸送からは撤退し、減収覚悟で冷凍食品とブロイラーに輸送品目を絞った。更に、九州─関西は大分、宮崎、鹿児島発着の長距離フェリーを利用し、休息期間の確保でドライバーの負担を減らした。 労働時間短縮に向けた努力が奏功し、13年3月、全ドライバーが改善基準告示を順守できる体制が整った。4月からは、1カ月の拘束時間を270時間に抑制。 「大型車の事故が後を絶たない。社会規制が強化された場合に即応できるよう、最小限の労働時間で収益が出せる体質に変えていく」 労働時間削減による売り上げ減少と海上輸送のコスト負担増で13、14年3月期は2年連続で赤字となった。3年に及ぶ経営改革を経て、輸送効率化と適正運賃収受が着実に進み、15、16年3月期は黒字に。17年3月期も増収増益を見込んでいる。 労働時間短縮はドライバーの収入減少という副作用を伴う。ドライバーは1秒でも長くハンドルを握るため、休憩時間、休息期間の時間管理に「キッチンタイマー」を利用している。 4時間の分割休息の際、デジタコの「終了」ボタンを法定時間よりわずかに早く押してしまうと、改善基準告示を満たすことができない。 キッチンタイマーで4時間のブザーが鳴った後、デジタコを操作すればミスは起きない。運転を即再開。1分、1秒を無駄にせず、法令を守りつつ収入を増やす地道な努力を重ねている。 「収入より家族と一緒に過ごす時間が大事と考える従業員も増えた。こうした時代のニーズも踏まえ、コンプライアンスに取り組んでいきたい。南九州は全国有数の食糧基地。安全で持続可能なサービスを提供していく」 【写真=地元産の食品を関東の大消費地まで届ける(本社)】