国交省/中長期港湾政策素案、生産性向上へICT活用 ターミナルゲート自動化
行政
2016/11/24 0:00
国土交通省は、トラック業界のドライバー不足、労働規制の強化に伴い、中長期的な港湾政策として、ICT(情報通信技術)を活用した港湾ターミナルの効率化や生産性向上に取り組む。例えば、ICTによりターミナルゲートの受け付けを自動化し、搬出入票の提示などを省略することで処理時間を短縮。物流情報をオープンデータとして共有することで、物流全体の適化を目指す。18日の交通政策審議会港湾分科会(小林潔司分科会長、京都大学経営管理大学院教授)で、中長期政策の方向性の素案として示した。(土屋太朗) 港湾政策に特化した中長期的な方針は1995年以来、策定していない。今回示した方向性を踏まえ、2018年3月までに終取りまとめを目指す。17年3月に開催予定の次回会合から、具体的な施策について議論したい考えだ。 物流関連の施策では、「国際輸送ネットワークの構築」と「効率的かつ持続的なサプライチェーン(SC、供給網)の構築」をテーマに据える。陸上輸送分野は、トラックの隊列走行、自動走行といった取り組みが加速しているため、効率的なSC構築に向けて、港湾でも自動化への対応を図る。 また、臨海部に立地する物流施設の更新や高度化を促す必要性を指摘。ドライバー不足に伴い、国内の長距離輸送網の維持が厳しい状況であることに加え、首都圏の人口集中に伴う渋滞問題や災害リスクへの懸念も示している。 こうした状況を受け、港湾ターミナルでICTを積極的に活用。通関やコンテナ搬出入、空コンテナの位置、荷役機械・シャシーの稼働状況といった各情報をオープン化して共有し、ビッグデータとして解析することで、物流全体を適化する方向性も盛り込んだ。更に、複数の荷主による共同輸送を促したり、国際フィーダー航路に国内貨物を混載したりすることで、輸送効率を改善していく。 一方、国際輸送網構築への取り組みでは、東南アジア―北米航路の貨物を取り込み、基幹航路の維持・拡大を目指す。東南アジア・南アジアから米国に向かう貨物は、日本発の60万TEU(20フィートコンテナ換算)に対し、284万TEUと拡大。このうち、香港などでトランシップ(積み替え)される6割の貨物について、日本への取り込みを図っていきたい考えだ。 アジアへのコンテナ輸送については、輸出企業の負担となっているリードタイムを改善。地方から輸出される貨物の3割が釜山港で一度積み替えて輸送されているため、直行便を充実させる。自動車部品や農水産品の輸送に関しては、国際RORO船やフェリー航路を活用し、国内並みの輸送時間を目指す。 また、エネルギーと環境の分野では、バルク貨物輸送に関する取り組みを明示。国際バルク戦略港湾での施策推進や、船舶の大型化に対応するための岸壁強化などに注力する。また、輸出入貨物の8割を占めるバルク貨物の輸送コストを低減させ、産業競争力を強化。シェールガスや水素、LNG(液化天然ガス)といった新たなエネルギー需要への対応策も打ち出す。 【写真=次回以降、具体策を検討】