大型施設/物流最適化、設計・運用指針を策定 官民で具体化むけ検討
行政
2016/11/21 0:00
国土交通省は、大型の商業施設やオフィスビルなどでの物流の最適化に向け、建物内への貨物搬入などに考慮した設計・運用ガイドラインを2016年度末に策定する。対象とする規模や用途などについて、きめ細かい調査や、関係者、専門家による協議を経て絞り込み、基準や事例などを示す方針だ。(田中信也) 16日、総合政策、土地建設産業、道路、自動車の各局など同省関係部局、経済産業省商務情報政策局、警察庁交通局など行政側と、日本物流団体連合会(工藤泰三会長)、日本百貨店協会(大西洋会長)、三菱地所など関係事業者団体・企業、学識経験者からなる「物流を考慮した建築物の設計・運用検討会」(苦瀬博仁座長、流通経済大学教授)を立ち上げ検討に着手した。 国交省を挙げて取り組んでいる生産性革命に基づく「成長加速物流」の考え方や、都市の競争力向上と産業インフラ機能強化に向けた施策として「物流を考慮した建築物の設計運用ガイドラインの16年度中の策定」が政府の日本再興戦略2016に盛り込まれたことを受け、官民で具体的な検討を進めていく。 初会合では、事務局の総合政策局物流政策課が検討の論点を説明。建築物の計画段階では「使用者の移動の検討が中心となり、円滑な物流の確保が必ずしも意識されていない状況」を踏まえ、利用者の利便性向上と、道路交通の支障防止や安全性の向上、街づくりとの調和の実現に向け、路上駐車の抑制といった効果が期待できるガイドラインの策定を目指す。 対象となる建築物は、人の利用が中心で、かつ日々一定量の物量が発生する商業施設、オフィスビル、マンションやこれらの複合施設を想定。ただ、マンションなどの居住施設については、不特定多数が出入りする他の施設とは異なる面があるため、対象に含めるかどうかなど別の角度からの検討が必要とみている。 規模については、設計面は一定以上の建築物を対象とするが、運用面では小規模な建築物や、物量が多くない用途の建築物でも、外部の倉庫を利用した一括集約搬入によるトラック台数の削減、館内物流の一元管理など有効な対策が想定されることから、規模に関わらず対象とする。設計面は新築物件に限定するが、運用面では既存施設も含め広く対象とする方針だ。 また、物流連の村上敏夫事務局長が、15年に取りまとめた大規模建築物の荷さばき施設の計画設計方法の提言について説明。事務局が事前に実施した建築物の分類と物量の関係に関する調査結果を報告した。 意見交換では、調査の内容について委員から「立地や設計から運用までのプロセス、利用者により異なる事情などが反映されていない」など指摘が相次いだ。これを踏まえ、再調査の実施を決定。このほか、「(商業施設などの)テナントや施主、管理会社など各者のメリットを示すべき」「(当該の)建物だけでなく周辺にも配慮すべき」といった意見も上がった。 12月に開催予定の次回会合で再調査の結果を示し、具体的な協議を行いたい考え。年明けに会合を2、3回開き、ガイドラインを取りまとめるが、規模や用途、関係者など検討の幅が広く、対象をどこまで絞り込むか難しい判断が求められそうだ。 また、今回の検討では、罰則や義務が伴う標準駐車場条例や大規模小売店舗立地法など法制度の改正には踏み込まない。ガイドラインの策定のみで実効性を上げられるかが問われる。 【写真=規模や用途、関係者など検討の幅が広く、対象をどこまで絞り込むか難しい判断が求められる】