海運3社コンテナ事業統合、運賃高騰を危惧 顧客への転嫁免れず
物流企業
2016/11/14 0:00
日本郵船、商船三井、川崎汽船が定期コンテナ船事業で経営統合する方針を示したことで、フォワーダー大手から運賃の高騰を危惧(きぐ)する声が上がっている。船社が1社になって仕入れ価格が上昇すれば、顧客への転嫁は免れず事業に影響を及ぼしそうだ。フォワーダー各社は船社の今後の動向を注視していく構えだが、経営統合そのものは前向きに受け止めているようだ。(土屋太朗) 海運3社は2017年7月に合弁会社を設立し、18年4月の事業開始を目指す。これにより、コンテナ船事業は船体規模で140万TEU(20フィートコンテナ換算)となり、専業会社としては世界6位になる見通し。海外ターミナル事業を含む売上高の単純合計は2兆403億円(16年3月期実績)になる。3社合計の世界シェアは7%だが、統合により更なるシェア拡大を見込む。 今回の統合は、コンテナ船の需給バランスの悪化や運賃の低迷といった海運不況の中で、国際競争力の強化を狙ったもの。フォワーダー事業者への影響は大きく、フォワーダー大手トップの関心も高い。考えられる影響として共通に挙げたのが、仕入れ価格の上昇だ。 「仕入れ先が1社になると、普通に考えればレートが上がる心配が出てくる」。郵船ロジスティクスの水島健二社長は、1日の決算説明会でこう指摘した。また、近鉄エクスプレスの鳥居伸年社長も8日の決算説明会で、「一般的な市場理論によれば、高くなるだろうというのが率直な気持ち」と懸念を示した。 また、阪急阪神エクスプレス(大阪市北区)の岡藤正策社長は8日、本紙の取材に対し、「統合は世界経済の変化に対応する前向きな動きだ。ただ、選択肢の減少で、16年以降、運賃にも影響する可能性がある」と説明。更に、「各社は傘下にターミナル運営会社などを抱えているため、これらの統合がどう動くか、慎重に状況を見極める必要がある」との考えを明らかにした。 一方、水島氏は「キャパシティーの融通が利く面もある」と言及。その上で、「良い点と悪い点があるので、船社とは今後も友好な関係を続けたい」と強調した。 鳥居氏は、仕入れ価格の上昇への対策について「我々、フォワーダーも荷主に転嫁しなければならない。その際は、船社が生き残るためであることを丁寧に説明していく」と話した。 【写真=合弁会社は18年4月にも事業を開始】