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定年退職後賃金下げ「合理的」判決、専門家の評価分かれる 継続雇用の実態沿う/格差認める理由曖昧

行政

2016/11/10 0:00

 定年退職後に再雇用したドライバーに対し、退職前と同様の業務内容で賃金を引き下げた長沢運輸(長沢尚明社長、横浜市鶴見区)の主張を認めた控訴審判決は、企業に高齢者の継続雇用の在り方を改めて問う形となった。専門家によっては「賃金引き下げは合理的」との判決内容に理解を示す一方、責任の重さや労働時間を考慮していない点を疑問視する声も出ている。最終判断は上告審に持ち越されるが、ドライバーの高齢化が進む物流企業への影響は避けられない。(土屋太朗、北原秀紀)  訴訟は、定年退職後に再雇用されたドライバー3人が、業務内容が同じにもかかわらず賃金を減らされたのは違法だとして、正社員との賃金格差の是正を求めたもの。正社員と有期契約労働者の労働条件について、不合理な格差を禁じる労働契約法20条違反の有無が争点となった。  一審の東京地裁は5月、ドライバー側の主張を認め、長沢運輸に対し総額400万円以上の支払いを命じた。しかし、11月2日の控訴審では一転、一審判決を取り消し、ドライバー側の請求を棄却。定年後の有期労働契約について「社会一般的に広く行われている」とし、これに伴う賃金引き下げは「合理的」と判断した。ドライバー側は上告する方針を固めている。  控訴審判決に対し、専門家の評価が分かれている。コヤマ経営(茨城県竜ケ崎市)の小山雅敬社長は「妥当な判決」と評価。賃金減額は「運送業に限らず社会一般に行われており、高齢者継続雇用の実態に沿っている」としている。  これに対し、保険サービスシステム(橋本卓也社長、東京都千代田区)の馬場栄・特定社会保険労務士は「意外な結果で、驚いている」と話す。「賃金減額は社会一般的」との判断について、「否定はしないが、職種や責任度合い、労働時間などを変更・勘案せずに認められたことに、いささか疑問が残る」と指摘する。  東京さくら法律事務所(三鷹市)の小柴一真弁護士は「一審と控訴審では労働契約法20条の解釈の差が出た」と説明。上告審は「どちらの方向に向くのか予想するのは非常に難しく、企業は難しい判断を迫られることになった」としながらも「判決の賃金格差を認める理由は曖昧(あいまい)で薄弱と言わざるを得ない。(上告審では)より具体的な理由付が必要」としている。 【写真=ドライバーの高齢化が進む物流企業への影響は避けられない(イメージ写真)】





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