熊本地震から半年㊤、九州道 片側1車線続く 国道57号通行止め 迂回路凍結「心配」
物流企業
2016/10/17 0:00
熊本地震(本震)が発生して半年――。大規模な路面崩壊の影響で、九州自動車道の1区間では片側1車線対面通行が続く。一方、阿蘇地方を抜け、熊本県と大分県を結ぶ物流ルートは、国道57号の通行止めで迂回(うかい)を余儀なくされている。冬場の路面凍結による交通事故や交通渋滞の発生を危ぐする声も日増しに強まる。(武原顕) 依然として片側1車線対面通行が続くのは、九州道・益城熊本空港インターチェンジ(IC)─嘉島ジャンクション(JCT)。朝夕は、5キロ程度の渋滞が常態化し、30分程度の遅れが発生している。 西日本高速道路九州支社(北田正彦支社長、福岡市博多区)は「現時点で4車線通行の再開見通しは立っていない」(広報課)としており、道路外側の斜面の補強工事もこれから。熊本交通運輸(住永金司社長、熊本県益城町)の吉川誠常務(52)は「復旧の時期がはっきりしていない。リードタイムを短縮するためにも、早期の全面復旧を願っている」と戸惑いを隠せない。 更に、御船ICから八代ICにかけては、路面が大きく波打ち、トラック車両は積み荷の固縛を徹底し、減速して通過しなければ危険な状況となっている。震災前の路面への復旧工事も着手されていない。 一方、阿蘇地方の道路の復旧整備は長期化しそうだ。九州地方整備局が斜面崩壊で通行不能の国道57号阿蘇大橋地区(熊本県南阿蘇村)を避ける北側復旧ルートを公表しているが、完成まで数年を要するとされる。 国道57号の通行止めは、九州を横断する物流ルートに大きな打撃を与えた。九州道・熊本ICから大津町を経由し、阿蘇方面に向かうミルクロードは、大分県に抜ける迂回路。現時点で唯一の物流アクセスとなっている。 ところが、このミルクロードは、一般道の片側1車線対面通行で、平時から交通事故や故障車両による交通渋滞の発生が危ぐされるルートでもある。城東運輸倉庫(熊本県大津町)の下川公一郎社長は(47)は「冬場の路面凍結が心配だ」と指摘する。 県の代表的な産業である農業、畜産業をはじめ、自動車、電機、半導体、飲料、製紙など大手メーカーの工場が生産を再開する中、県内を走る基幹道路の全面復旧が1年から数年の歳月を要するだけに、サプライチェーン(供給網)の全面回復は道半ばだ。 東九州を南北に走る東九州自動車道の北九州─宮崎が4月に、1年遅れでようやく全線開通。「陸の孤島」と揶揄(やゆ)されてきた東九州道沿線地域の物流活性化に関心が集まる。 こうした中、川崎近海汽船が3日、大分(大分市)─清水(静岡県清水区)両港を20時間、週3便で結ぶ新規航路を開設。大分市で同日開かれた竣工披露式典には、熊本県のトラック運送事業者も出席した。 東九州道とフェリー航送をドッキングした新たな輸送モードの選択肢が加わり、荷主企業への新たな物流提案が可能になる。式典では、大分県の広瀬勝貞知事も「経済効果は大きい」と手放しで歓迎した。 東九州の玄関口と期待される大分県。自治体は、広域的な物流への波及効果をはじめ、大規模災害時の代替機能、緊急救援物資輸送、救急医療の役割を重要視する。 一方、産業界や運送事業者は、BCP(事業継続計画)への対応、地元の特産物の販路を拡大する上でも、九州を横断する基幹道路の全面復旧は不可欠。コンプライアンス(法令順守)の徹底を急ぐ運送事業者からも、早期の交通アクセス整備を求める声が高まっている。 【写真=熊本から阿蘇地方への迂回路となるミルクロードの渋滞が懸念される】