東京メトロなど、地下鉄で貨物輸送実験モーダルシフト検証
産業
2016/09/01 0:00
地下鉄を活用した東京都心での貨物輸送実験を実施――。東京地下鉄(東京メトロ、奥義光社長、東京都台東区)、東武鉄道、ヤマト運輸(長尾裕社長、中央区)、佐川急便(荒木秀夫社長、京都市南区)、日本郵便(横山邦男社長、東京都千代田区)の5社は8月29日、東京メトロ有楽町線と東武東上線で、既存の車両基地を活用した物流実証実験を9月9日から10回行う、と発表した。物流各社のニーズや旅客輸送に与える影響などを検証し、トラックからのモールシフトの可能性を探っていく。(田中信也) 国土交通省は2015年12月、交通渋滞やトラックドライバーの不足などの物流に関する社会的課題の解決策として、物流政策の基本的な方向性を打ち出した。実証実験はこのうち、旅客鉄道の輸送力を活用した貨物輸送の実現に向け実施する。 車両へ荷物を搬出入しやすい車両基地が両端にあり、かつ基地周辺に大規模な物流センターが集中していることから、対象区間は東京メトロ有楽町線全線と、同線と相互乗り入れしている東武東上線(和光市―森林公園)が選ばれた。 実験は「拠点(物流センター)間輸送」「拠点、駅間輸送」の2パターンで実施。いずれも実際の荷物ではなく、重量を段ボールなどで再現した「模擬荷物」を台車などに積載した上で、回送車両による実験専用ダイヤで運行する。 拠点間輸送は、物流各社の拠点からトラックで模擬荷物を新木場車両基地(東京メトロ)に搬入し、東京メトロ10000系の1両に荷物を積載。和光車両基地(同)または森林公園検修区(東武)に到着した列車から荷物を下ろし、トラックで物流拠点に搬出する。5社で実施するが、日本郵便は新木場―和光のみ輸送する。 一方、拠点、駅間輸送は、東京メトロ、ヤマト、佐川の3社で実施。新木場車両基地から積み込んだ模擬荷物を有楽町線の新富町、銀座一丁目、有楽町の各駅で荷物(台車1台程度)を下ろし、駅構内を経由して地上まで搬送する。 実験は10日にわたり実施。9月9、10日、10月14、15日がヤマト、9月16、17日、10月7、8日は佐川、9月30日、10月1日に日本郵便の専用便としてそれぞれ昼間や早朝帯に1日1便運行する。 なお、日本郵便は、自社が参加する実験の概要を公表。新東京郵便局から新木場基地までトラックで搬送し、和光車両基地まで鉄道で運び、東京北部郵便局に搬入する。搬送時間は鉄道2時間10分、トラック16分の計2時間26分(搬出入時間は除く)を見込んでいる 実験終了後は、各社で作業工程ごとの所要時間、必要な人員数、安全確保のための人員配置計画、作業効率性や安全性に関する機器・施設・設備の必要性と規模、旅客輸送への影響などを検証。旅客鉄道を活用した貨物輸送への可能性を国交省も交え検討していく。 【写真=9日から計10便運行(有楽町線有楽町駅)】