放置車両取り締まり、11年から件数急増 違反金狙い? 運転者離れ拍車
行政
2016/08/22 0:00
放置車両を取り締まる制度が導入されてから10年が経過したが、「往来の交通の妨げになる車両を取り締まる」という当初の目的から逸脱し、違反金の徴収自体が狙いになっているとみられるケースが相次いでいる。運輸労連(難波淳介委員長)の調査によると、2011年ごろから取り締まり件数が急増。様々な団体が警視庁などに「配慮」を求めてきたが、良い回答は返ってこない。ドライバー離れに拍車を掛ける要因となっており、悲鳴が上がっている。要望活動では、いかに多くの団体が連携するかが鍵を握りそうだ。(高橋朋宏) 運輸労連に加盟する、ある大手物流事業者に対する都内での取り締まり件数は、2010年173件、11年440件、12年528件、13年661件で、増加傾向となっている。 運輸労連は「喫緊の課題と捉えている。これまでと同じような要望活動ではいつまでたっても好転しない。単体ではなく、同じような課題を抱える団体と一緒になって与党にきっちりと現状を伝え、要望していく」としている。今後、相当数の取り締まりを受けている東京都生活協同組合連合会(伊野瀬十三会長)や日本郵便(横山邦男社長、東京都千代田区)との連携を強化し、活動を展開していく方針だ。 コープみらい東京都本部で4年ほど前に行った調査によると、都内での取り締まり件数は年間1千件を超えた。都議会や警視庁に申し入れを行ってきたが、結局は「法律にのっとって取り締まりを行う」という回答を受け「法律が変わらなくては厳しいのが現状」(竹内誠専務)との認識だ。 年間の違反金は4500万円程度だが、度重なる取り締まりで車両停止となった際の損失は5億円にも上る。竹内専務は「取り締まりの緩和について会員から要望が寄せられており、これまでとは異なるアプローチ方法を検討していきい」と有効な手立てを模索している。 日本郵便では、バイクも含めて取り締まり対象となっており、コインパーキングの利用など対策に苦慮しているという。 現場では「通行の妨げになっていないのに、少し離れただけで違反とされた」「ルート配送の時間を狙って取り締まろうとしている」といった状況で、往来の交通の円滑化ではなく、取り締まり自体が目的となっているケースが少なくなさそうだ。 度重なる取り締まりはドライバーに多大なストレスをもたらすとともに、経営を直撃する。 違反の前歴が無いドライバーの場合、違反日から起算して過去6カ月以内に3回違反したケースでは、大型・中型などで車両使用停止3カ月、普通自動車で2カ月、自動2輪で1カ月が科される。前歴1回だと6カ月以内に違反2回、前歴2回以上では違反1回で車両の使用が停止される。 継続的に放置車両問題に取り組んできた東京都トラック協会(千原武美会長)では、地元警察や商工会議所などと交渉を重ねて「緩和区域」などの整備を要望してきたが、効果は限定的だ。 「都民の生活を支えるために荷物を届ける運送事業者が取り締まられるのは、筋が違う」との声は多く、東ト協で放置車両問題を担当する藤倉泰徳副会長は「正攻法で解決するのは難しいように感じる。何とか糸口を見つけたい」と話している。 【写真=度重なる取り締まりがドライバーに多大なストレスをもたらしている】