徳島港湾荷役、海外市場開拓を支援 農業技術 ベトナム輸出計画
物流企業
2016/08/18 0:00
徳島港湾荷役(徳島市)は、荷主の海外マーケット開拓を支援することで物量の底上げを図っている。端村圭社長(41)が2015年8月、海外展開を目指す県内の農家や生産者に代わって海外バイヤーとの商談や貿易事務、物流などを行う地域商社、基(MOTOI、同市)を設立。将来は、日本の農業技術をベトナムに輸出する計画もあり、国際協力機構(JICA)に中小企業海外展開支援事業の提案を行い、16年7月に案件化調査事業に採択された。(江藤和博) 「コンテナの取扱量はそれほど減っていないが、徳島小松島港の輸出入通関件数はここ10年で4割減っている。地場中小企業が市場から退場し、大企業しか生き残っていないからだ。こんな状況で大企業を誘致しても地元企業の下請け化が進み、非正規雇用の労働者が増えるだけ。無い物ねだりではなく、地域でいいものを発掘し、海外に売り込んでいく」(端村社長) 基は、貿易事業などを手掛ける知人との共同出資(資本金500万円)で設立。代表取締役も共同で務め、本社は徳島港湾荷役に置く。海外で県内産品の展示会を開催し、バイヤーとの交渉や貿易事務代行などを生産者に代わって引き受ける。また、生産者から国内卸価格で仕入れ、海外販売も行う。 「小規模な生産者は営業マンを置けず、小ロットでは採算が合わない。海外のバイヤーは一つの窓口と交渉したい。社名の『基』は共通のプラットフォームの意味。悩みを投げてもらって共有し、解決していく」これまでシンガポールやシアトル、ホーチミン、キプロス、ブルガリア、メルボルン、マニラ、ソウルなど世界の都市で取り組みを実施しており、取引が成立したり、商談が進んでいる。取扱品目は地元名産のなると金時や加工品など幅広い。7月26日から8月9日まで台北で開催された日本商品展では、徳島県から出展した7ブース13社(団体)のうち、基が4社12アイテムを取り扱った。 展示会で販売補助などを担当するスタッフにはインターン学生を活用。6月に徳島港湾荷役が四国大学国際部とインターンシップ受け入れ協定を結んだ。学生にとっては地元を知る良い機会となっている。 「国内需要が減る中、世界の食糧需要は10年で2倍になると見込まれている。しかし、大手商社は小規模な生産者を相手にしてくれないし、県も商売の手伝いをするには限界がある。そんな中で基は世界のニーズを探り、現地の声を持ち帰って研究開発に生かしてもらう、マーケティングの役割も担う。安全・安心で世界的評価の高い日本の食材には大きな伸びしろがある」 JICAに採択された案件化調査のテーマは「徳島式土壌改良法による園芸作物の生産性と品質向上」。日本の農家自体は世界に通用する技術を持っており、残留農薬による健康被害が出ているベトナムに出していく試み。10月から調査を開始し、将来は農業法人の設立を目指す。 端村氏は15年5月にベトナム・ハナム省の共産党書記と面会。「日本からの輸出だけでなく、ベトナムで農業をして欲しい」との打診を受け、7月に現地農園を視察、8月にはハナム省人民委員会と試験栽培に関する覚書を締結した。11月には、ハナム省幹部が、徳島県の熊谷幸三副知事を表敬訪問している。短期目標としてビジネスモデルを組み立て、現地企業との協業の可能性を探っていく。 地域商社を設立した狙いの一つは、少子高齢化で先細りが懸念される物流事業の底上げ。これまで出荷した商品の量はコンテナを仕立てるまでには達していない。しかし、バイヤーとの取り引きを継続して信用力を高めることで、日本全国の産品の取り扱いを拡大して物量を確保することも可能とみている。 「インフラだけで成長は難しい。ニーズがあることをやっていかないと、国内物流のマーケットが伸びることはありえない」。今後も基の事業に力を入れ、7、8年後には徳島港湾荷役の売上高(16年3月期で7億円)を抜くのが目標だ。 【写真=ベトナム・ハナム省人民委員会と試験栽培の覚書を締結(昨年8月)】