東日本高速/渋滞予報士、外山敬祐氏、むやみな車線変更避けて
産業
2016/08/11 0:00
お盆や年末年始、大型連休でドライバーを困惑させる高速道路の交通渋滞は、物流に与える影響も小さくない。国内でただ一人の「渋滞予報士」を務める東日本高速道路関東支社(さいたま市大宮区)の外山(とやま)敬祐氏(31)に渋滞発生のメカニズム、渋滞を避ける方法、渋滞を引き起こさないためのヒントなどを聞いた。(小瀬川厚) ――渋滞予報士について教えて欲しい。 旧日本道路公団時代から渋滞予測業務を行っていたが、もっと渋滞予測を活用していただくために、お客さまや報道機関の方々に渋滞について興味を持っていただけるよう、2007年7月から「渋滞予報士」という愛称を付けた。年間を通じて「いつ・どこで・どれくらい」の渋滞が発生するか予測し、渋滞対策の立案・効果検証、その予測・対策のPRを行っている。 資格は必要無いが、交通特性・交通動向等に精通していることが求められ、歴代予報士は学生時代に交通工学、交通計画学などを専攻していたことが多い。予報士は自分で5代目となる。高速道路の渋滞の多くが関東支社管内で発生しているため、渋滞予報士は当支社に置かれた。 ――どのように渋滞を予測するのか。 基本的には過去3年間の渋滞データを基に、曜日配列やイベントの有無などを加味して分析している。今年度からは首都圏の通行料金体系も大幅に変更されており、こういった環境の変化があった時には予測への反映を行うとともに、渋滞実績をシーズン終了後に再分析し、精度を高めるための取り組みを続けている。 ――的中率はどうか。 渋滞予報士としての本来の目的は、渋滞予測を通じてピークとなる時間帯の通行を避けてもらうこと。従って、天気予報とは性質が異なり、100%の的中率を目指すものではないが、的中率が低すぎても活用してもらえなくなるというジレンマがある。実際の的中率は7、8割といったところではないか。 ――渋滞が発生するメカニズムを教えて欲しい。 当社における高速道路の渋滞の8割は、交通集中によるもの。このうち6割は、下り坂から上り坂に変化する「サグ」と呼ばれる地点や上り坂で発生する。いずれも無意識に速度が低下しやすい場所である。このほかに他社路線(首都高速道路など)や一般道へのアクセス路の渋滞が本線にまで影響を及ぼす場合が2割ほどとなっている。渋滞の起こりやすい場所では、車線増工事に加え、速度回復掲示板やペースメーカーライトといった設備の導入を進めている。 15年5月の大型連休で渋滞区間ワーストだった東北自動車道・岩舟ジャンクション(JCT)付近では、車線を増やした結果、今年の同シーズンはここを先頭とする渋滞が発生しなかった。こういった取り組みを知ってもらいたい。 ――渋滞時に気を付けるポイントは。 まず第一に事故を起こさないこと。渋滞中に事故が発生すると、更に渋滞長が延びることがある。渋滞している本線では、むやみに車線変更するのは避けて欲しい。後続の車両に影響を与える恐れがある。 ――全国のトラック事業者、ドライバーに伝えたいことはあるか。 時間と心にゆとりを持って安全な運転をして欲しい。このお盆期間の渋滞回数は例年並みだが、規模などは減少傾向にある。スマートフォン(スマホ)で全国の高速道路の交通情報を無料でチェックできる「ドライブトラフィック(ドラトラ)」などを活用し、事前の運行計画に役立てて欲しい。 また、年間を通じて本線上への落下物は関東支社管内だけでも4万件を超える。積み荷の確実な固縛や休憩時の確認、徹底をお願いしたい。