佐賀/タマネギ不作、べと病で輸送量激減 モード変更&貨物開拓
物流企業
2016/07/28 0:00
【佐賀】全国2位の生産量を誇る佐賀県のタマネギ。2014年以降、異常気象による不作が続く中、16年に入ってタマネギの生育に悪影響を及ぼす「べと病」が発生し、生産量は3分の1まで減少した。タマネギの輸送を担うトラック運送事業者は、輸送量が激減するなど大きな影響を受け、輸送モードの変更や新規貨物の開拓など、あの手この手で迅速な対応に取り組んでいる。(上田慎二) 佐賀県産のタマネギは3月から8月までが出荷シーズン。佐賀運輸(田中康紀社長、神埼市)の通運部門では、毎年、鉄道コンテナで県産タマネギを関東方面に出荷し、年間5500個のコンテナ(5トン換算)を取り扱う。 ところが、3月から6月までの取扱量が前年同期比の4割まで減った。多くの農家が今シーズンの生産を早めに終えた。 こうした事態に対応するため、青果物や雑貨の鉄道へのモーダルシフトを生産者に提案し、受注獲得に乗り出した。同社鳥栖支店の武富秀一支店長(44)は「リードタイムや貨物量のミスマッチがネックになっている」と説明する。 鉄道コンテナは基本的に5トン単位だが、増トントラックが増えているため、積載量の調整が難しく、大幅なコストアップになるケースが少なくない。 白石町や鹿島市などで収穫されるタマネギを鉄道コンテナ輸送で関東の市場に運んでいる肥前通運(松尾弘隆社長、武雄市)でも、出荷量は年々減少傾向にある。 鉄道コンテナ輸送量は、異常気象の影響で14年が2千個、15年1500個となり、今年は千個と3年連続で減少した。アスパラガスなどタマネギに代わる貨物獲得に取り組んでいるが、補うだけの量は確保できそうにない。 天候不順はタマネギ以外の作物にも影響を与える。県産の野菜、果物を手広く扱う前田運送(白石町)の藤田治喜社長(73)は「青果物は品目を問わず輸送量が減少している。異常気象ばかりでなく、農家の高齢化と担い手不足、人口減少による消費減など、農業を取り巻く課題は多い。関連する物流企業の環境も厳しさを増すだろう」とみる。一方、農業生産法人、ベジタブルクイーン(福永寿一社長、鹿児島県鹿屋市)を運営する大姶良運送(同)では、異常気象による病害の広がりに対処するため自ら防疫活動に取り組む。 有機栽培が主力の同法人では、4万平方メートルの畑で小ネギ、大ネギ、ゴボウ、ニンジンなどを生産している。4月下旬、大雨や高温の異常気象が原因で、栽培中のネギの一部にべと病の兆候が現れた。 有機栽培を継続するため、病害防止の手段に化学合成農薬を選ばず、防疫微生物の散布を選択。微生物の分解能力を活用して土壌を浄化し、全ての農地でべと病の発生を食い止めることに成功した。 大雨や高温・低温、台風などの異常気象は毎年、全国各地で発生する。青果物の出荷量は天候に大きく左右されるため、トラック運送事業者は出荷が安定している新規貨物の開拓などの対策に追われている。 【写真=異常気象による発育不良で、廃棄されたタマネギ(白石町)】