国交省、ドローンポート研究着手 情報共有へ連絡会発足
行政
2016/07/25 0:00
国土交通省は、小型無人機(ドローン)による荷物配送の実現に向け、目視外飛行で安全に自動離着陸が可能な「物流用ドローンポート」の研究開発に着手した。メーカーなど関係者との情報共有を図りつつ、2017年2月に検証実験を実施。政府が「ドローン配送の実現を目指す」としている18年までに方向性を打ち出す。(田中信也) ドローンの物流への活用には、配送先まで飛行後、着陸して荷物を下ろして再度離陸し、元の場所に戻る――という、撮影や農薬散布などでの利用と比べ複雑なプロセスがある。これを実現するには、目視外飛行かつ無人で、高精度で安全に行うことが求められる。一方、現在の機体性能では、飛行可能な総重量は限られているため、機体本体の重量を抑えながら、安価にすることも必要となる。 目視外飛行での安全な自動離着陸を可能とするため、国交省は交通運輸分野の技術開発の推進を目的とした競争的資金制度(交通運輸技術開発推進制度)を活用。ドローンインテグレ―ターのブルーイノベーション(熊田貴之社長、東京都千代田区)、東京大学と連携し、研究開発を進めていく。 研究開発の状況を関係者が共有するとともに、物流での活用に関する意見聴取を行うため、ドローンメーカーや物流事業者、関係行政機関で構成する物流用ドローンポート連絡会(鈴木真二座長、東京大学大学院教授)を21日に発足させた。 発足に当たって、重田雅史物流審議官があいさつに立ち、「物流でのドローン活用は高いハードルだが、手をこまねいているのではなく、世界的にも最先端をいく関係者と情報共有したい。ラストワンマイルの配送はもちろん、営業所間の輸送についてもすり合わせを行い、事業として成立できるよう議論を積み重ねて欲しい」と要請した。 初会合では、2月に徳島県那賀町で行った貨物輸送実験の概要を事務局が説明。同町の住民に実施したアンケートなどを踏まえ、①目視外飛行での安全確保②国民の不安の解消③基礎的性能の向上④輸送事業としての輸送の確実性確保と社会的信用の確立――を検討の視点として示した。 目視外飛行での安全確保では「補助者を配置せずに、これと同等の安全性を機械、装置などで確保するための技術開発」、事業採算性確保に向けては「重量物を運べるドローンが実用化されない中で、宅配事業ではトラック輸送を残しつつ、ドローンでの採算性をいかに確保するか」といった課題を克服することが「事業化には不可欠」と強調した。 意見交換では、日本郵便(横山邦男社長、東京都千代田区)の小川真郷・経営企画部企画役が「信書や軽い荷物の輸送に活用の余地がある」との期待を述べた一方、ヤマトホールディングスの牧浦真司執行役員は「既存の宅急便システムでの導入は困難」との見解を示した。 【写真=研究開発の状況を共有するとともに、物流での活用に向け意見聴取】