熊本地震の初動対応 物資輸送、機能せず 政府検証 役割分担「明確に」
行政
2016/07/25 0:00
政府は20日、熊本地震の初動対応に関する検証結果の第1弾を発表し、物資拠点から避難所までの「ラストワンマイル」の輸送が機能しなかったことや、初期の輸送状況を把握するシステムが無かったことが影響し、現地の物流現場で混乱が生じたことを指摘した。今後は、年内をメドに道府県と政令市の役割分担の明確化、物流システムの構築などについても多面的に検証。マニュアルの見直し、訓練の実施などを通じ、災害時の物流体制を再構築する。(土屋太朗) 今後の災害対応に生かすため、杉田和博内閣官房副長官を座長とした検証チームが初動対応を調査し、リポートを公表。更なる検討が必要な事項については、災害対応を総合的に評価する有識者ワーキンググループ(WG)に引き継ぐ。 検証は①自治体支援②避難所運営③物資輸送――を中心に実施。いずれも項目ごとに分類し、「○」「△」「×」の3段階で評価した。このうち物資輸送では、プッシュ型支援について「水や食料といった主要物資の不足感が無くなり、被災地の不安解消に役立った」と分析し、○を付けた。 また、輸送状況をリアルタイムで把握するため、タブレット(多機能携帯端末)を活用したことも評価。ただし、システムの稼働に2日ほどかかった点を課題に挙げ、「当初から導入されていれば、物資ニーズの把握がより的確、迅速にできた」と指摘した。 一方、避難所までのラストワンマイルの輸送に関しては、具体的な計画が無く、物流事業者のほかに自衛隊、NPO(非営利組織)なども担うことになったことから、×と評価。物流事業者や自治体が機能的に物資輸送できるよう、川上から川下まで、それぞれの役割分担を明確にする必要性を強調した。 更に、発災直後は、物資の発注・輸送状況を把握するシステムが無かった点も問題視。リポートでは「無駄な待機時間がある一方で、夜間に大量の物資が急に搬入されるといった混乱が生じた」ことを例に挙げ、物流事業者を含めた関係者が情報共有できるシステムを速やかに構築するよう促した。システム構築後の実践的な訓練の実施も求めた。 このほか、佐賀県鳥栖市の物流拠点では、営業時間が限られていたため、トラックが待機せざるを得ない状況が発生。このため、災害時に常に利用できる拠点をリストアップするよう訴えた。 【写真=トラックが待機せざるを得ない状況が発生。リポートでは災害時に常に利用できる物流拠点の必要性を強調】