熊本・益城で震度7、物流企業 安否確認に追われ 荷物散乱 大きな被害
物流企業
2016/04/18 0:00
14日午後9時26分ごろ、熊本県を中心に九州全域、西日本の広い範囲で強い地震が発生し、大手・中堅の物流企業や大手製薬会社の工場などが集積する熊本県益城町で震度7を観測した。警察庁の発表によると、15日午前6時5分時点で死者が9人、負傷者は多数いる模様。九州自動車道・益城熊本空港インターチェンジ(IC)近郊の物流企業各社では荷物が散乱し、窓ガラスが割れるなど大きな被害が発生。九州道では、南関IC─えびのICを始め同県内の一部区間が通行止めとなり、関東・関西を結ぶ運行便が遅れるなど物流に混乱が生じた。(武原顕、上田慎二) 益城熊本空港ICから車で5分の距離に立地する熊本交通運輸(住永金司社長、益城町)本社では、地震発生直後から従業員と家族の安否確認に追われた。吉川誠常務(51)は「従業員1人の家屋が倒壊したが、人的被害は無かった。とにかく、無事で安心した」と話す。 事務所では、机や椅子が乱れ、書類も飛散。社屋2階のガラスやサッシが落ち、砕け散った。パソコン、書棚も倒れ、備品が散乱した。九州全域をカバーするクロスドッキングセンター(DC)の益城物流センター(益城町)では壁に亀裂が入り、自動ラック立体倉庫が破損、垂直搬送エレベーターも建物のゆがみで使用できなくなった。 九州産交運輸(荒川泰治社長、熊本市南区)も、地震発生直後から全社員の安否確認を急ぎ、熊本支店・環境区域センター(益城町)の状況確認と対応に入った。 現地行政の対応では、九州運輸局が非常体制を発令して災害対策本部を設置。14日午後11時、翌午前1時、同9時に災害対策会議を相次いで開いた。熊本県にはリエゾン(災害対策現地報連絡員)2人を派遣。今後、自治体や熊本県トラック協会(住永豊武会長)と連携して対応する考えだ。九州地方整備局も非常体制を発令し、防災ヘリコプターで上空から調査。同町での災害情報の収集、災害応急対策の支援を行うリエゾンを自治体に派遣した。 益城町の役場や保健福祉センターの避難所は家族連れであふれた。深夜になって冷え込みが厳しくなり、配布された毛布にくるまり、疲れ切った高齢者や子供の姿が見られた。 緊急対策本部を設置した熊ト協は、県と市から要請を受け、トラック数十台で同センターなどへ緊急支援物資を輸送。県内には避難所が500カ所以上あるため、出動車両は今後、増えそうだ。また、全日本トラック協会(星野良三会長)も対策本部を立ち上げ、テレビ会議システムなどを通じて情報収集に努めている。 同町上空にはヘリコプターが飛び、被災現場へ救助に向かう自衛隊、警察、消防、救急車のサイレンが鳴り響いた。交通機関は、九州道の益城熊本空港IC-松橋IC、御船IC-松橋ICの上下線で道路が陥没。益城熊本空港IC-嘉島ジャンクション(JCT)下り線の177.8キロポスト付近の路面陥没で、トラックが落ち込む被害が発生したが、けが人は出ていない。 気象庁によると、震源地は熊本県中部で深さが約11キロ。マグニチュード6.5と推定され、九州では観測史上最大。国内で震度7を記録したのは東日本大震災以来となる。なお、九州では2005年3月20日、福岡県の玄界灘で発生した福岡県西方沖地震で、震度7に相当する大きな地震があった。 【写真=崩壊して通れなくなった国道443号(益城町寺迫)=写真上田慎二】