北海道トンネル/アルミ板衝突事故、修理費支払われず トラ事業者不安募る
物流企業
2016/03/28 0:00
北海道浦幌町の直別トンネルで、1月に帯広市内の事業用トラックが、トンネルの天井からはがれかけていた重さ20キロの漏水防止板に衝突し、けん引していたトレーラが破損した事故で、車両を保有するトラック事業者が北海道開発局帯広開発建設部に求めていた修理費は、支払われないことが分かった。道央と道東をつなぐ物流の大動脈となっている場所だけに、事故の責任の所在や安全面で、トラック事業者らは不安を募らせている。(大島杏奈) 浦幌町を走る国道38号には、事故のあった直別トンネル、浦幌、上厚内の三つのトンネルがあり、いずれも道幅、高さ共に狭く、車高3.8メートル、車幅3メートルを超える特殊車両は通行が禁止されている。 事故は1月21日、道東運輸(戸出優子社長、帯広市)のトラックが、釧路から帯広へ向かう途中の直別トンネル内で発生。天井からはがれてぶら下がっていたと思われる漏水防止用のアルミ板(縦1メートル、横2メートル、重さ20キロほど)に接触し、けん引していたトレーラの左前方上部が破損した。 トレーラは通行基準を満たしていたにもかかわらず、修理費用の50万円は同社が負担することになった。 戸出社長(66)は「大型車両同士がすれ違うにはギリギリで、トンネル側面に接触し、サイドミラーが破損したという話もよく耳にする。今回の事故で修理費用は掛かったが、ドライバーにケガが無かったのは不幸中の幸い。タイミング悪く乗用車に落下していたら、ケガでは済まないはず」とトンネルの早期改修の必要性を強調する。 事故後、同社は道路を管理する帯広開建部に被害を報告し、修理費用の負担を求めたが、同開建部では「事故当日のパトロールで異常はなかった。恐らく通行を禁止されている違反車両が無理に通ったことで、天井が破損していたのだろう。違反車両が見つかれば賠償を求められるが、我々に修理費用を負担する責任は無い」と回答。 戸出氏は「サイドミラーの破損事故も含め、被害者側が泣き寝入りするしかない現状を何とかしなければいけない。国道を安心して走ることができるよう改善してもらいたい。トンネルを広げることはできなくても、信号を付けて片側通行にしたり、監視カメラを取り付けたりするなど、防止策を講じて欲しい」と訴える。 三つのトンネルはいずれも「建設から50年以上が経過」(同開建部)しており、今後、一層老朽化による事故が懸念されている。また、道幅が狭いため、「大型車両同士のすれ違いに不安を感じるドライバーが、トンネルの手前で待機するケースもまれではない」(業界関係者)という。同開建部が把握しているだけでも、3カ所のトンネルで同様の事故が過去3年間で6件発生。最初に接触した原因車について、「バスや乗用車がトンネルの天井にぶつかる可能性は考えにくく、トラックに限られるのでは」(同開建部)と説明。万が一、漏水防止板が乗用車などに落下し、重大な事故に発展したとしても「あくまでも原因車の責任であって、開建部に責任は無い」と断言している。走り去った原因車を特定できない場合、ぶつかった後続車が「不運」で片づけられることになる。 国道38号は道央と道東を結ぶため、十勝地区トラック協会(沢本輝之会長)では、15年以上前から、毎年「国道38号浦幌トンネル等改良に関する提案書」を開建部へ提出し、安全に走られるように改善を求め続けているが、いまだ改良工事は実施されていない。 38号利用時に比べ、う回路は遠回りで時間や燃料費が余計にかかり、有料区間を通る場合にはその料金も負担することになる。釧勝峠のある国道392号を利用する方法もあるが、急勾配と急カーブが連続するため、特に寒冷期には安全運行の確保が難しく、十勝地区では、38号を利用する事業者が圧倒的に多い。 北海道トラック協会の伊藤昭人会長(71)は2月29日、北海道開発局を訪れ、本田幸一局長(59)に「予算の問題もあるだろうが、漏水防止板の落下によって重大な事故が懸念されるので、防止対策を講じていただきたい」と口頭で要請した。 帯広開建部では「当該区域では、警察の協力を得て、違反車両の取り締まりも行っている。特車の通行制限については更に啓もうしていく必要があるので、これからも協力をお願いしたい。また、12日に白糠インターチェンジ(IC)から阿寒ICまで延伸した道東自動車道は、本別IC―阿寒ICまでが無料通行区間なので、今後はそちらも選択肢に入れて欲しい」としている。 【写真=漏水防止板との接触事故が起きた直別トンネル】