ETC2.0 物流を変える? 特車ゴールド月内導入
行政
2016/01/04 0:00
次世代型自動料金収受システム「ETC2.0」がトラック運送、物流の未来を変えるか。国土交通省は、2015年8月に本格提供を開始したETC2.0を活用した料金、整備、運転支援などのサービスを順次スタートさせるが、中でも営業用トラックを普及拡大のトップランナーに位置付けている。(田中信也) 重量物などの特殊車両通行許可を申請する際、ETC2.0装着車が国の指定した大型車誘導区間を走行する場合に輸送経路の申請を一本化する「特車ゴールド制度」(仮称)が16年1月中に導入される。1年ごとの更新手続きが自動化(ワンクリック化)され、更新の度に管轄の自治体へ行かずに済むようになる。重量物輸送事業者にとって、省力化による有形無形の効果は小さくない。また、トラック事業者を対象にした運行管理支援サービスの社会実験もスタート。経路情報を活用し、運行管理の効率化やドライバーの安全確保につなげるため、実験参加者から得られたデータを加工・表示し、運行管理に活用できるデータとして提供する。正確な到着時刻を予測できるようになることで、荷待ち時間の短縮につながるほか、急カーブなど運転の危険箇所をピンポイントで特定可能なため、安全確保にも効果がある――としている。 ETC2.0は、道路沿いに設置されたITSスポット(通信アンテナ)と対応車載器の間で高速・大容量かつ双方向での通信が可能な、世界初の路車協調システムによる運転支援サービスを受けられる次世代型ETC――つまり、「従来のETCに運行管理ができる車載器を搭載した」ものだ。 デジタルタコグラフやスマートフォン(スマホ)を活用した動態管理システムが多く出回る中、なぜETCに運行管理機能を付加するのか。専門家からも疑問が上がっているが、国交省道路局企画課の水野宏治道路計画調整官(43)は「主目的はあくまでも料金収受で、そのほかはプラスアルファに過ぎない」と強調する。 なぜ運行管理機能なのか。トラック事業者にとってデジタコの装着は業務上有効だが、業界のほとんどを占める中小零細事業者にとって、その導入費用は高い。このため、今や高速道路を利用する大半の車両が搭載するETCに着目。水野氏は「運行管理のツールとしてはデジタコがあるが、より簡易でコストの掛からないETC2.0が中小事業者に広く普及することを期待する」と話す。 主目的の高速料金収受については、「利用者に装着のメリットを感じてもらい、導入を加速させる」ためのインセンティブとして、4月から首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の利用について2割引きを適用するほか、大口・多頻度割引の対象道路に追加する。普及促進に加え、首都高速道路などで発生している大都市の渋緩和も目的で、都心部の混雑状況に応じた機動的な料金制度の導入を視野に入れている。更に、災害・事故時や給油のため一般道路への一時退出・再進入を認める「途中下車」にも16年度から順次対応していく。 トラック事業者の利用が大半を占める大口・多頻度割引で最も大きなインパクトを持つのが、最大割引率50%の適用を16年度からETC2.0搭載車に限定する措置(半年間は激変緩和措置として現行のETC利用者にも適用)だ。同氏が「事業者向けの購入補助も実施するが、割引の恩恵は大きい」と話すように、道路局は普及拡大の起爆剤として期待する。 だが、ETC2.0のインセンティブを受けるためには、現状ではカーナビゲーションシステムと連動させる必要がある。カーナビは、トラックなど決まったルートを走る商用車には装着されていないケースが多く、課題として持ち上がる可能性がある。 こうした条件に対応するため、パナソニックは初のGPS(全地球測位システム)内蔵型のETC2.0車載器「CY―ET5000GD」を15年11月に発売。「カーナビとセットで10万円前後の購入コストが掛かるが、中小事業者の費用負担を考慮し、(ETC2・0の)車載器単体でサービスを受けられるよう開発した」と、パナソニックの社内カンパニー、オートモーティブ・インダストリアルシステムズ社の車載エレクトロニクス事業部プログラムマネジメント部PM一課の岩波誠主務(41)は開発の意図を説明する。 しかし、導入コストは取り付け費用も含め4万5千円前後(オープン価格)と決して安くない。ただ、デンソーなど他のメーカーも同様の製品を間もなく発売する見通し。また、当面は高速道路会社が1台当たり1万円の購入補助を行うほか、全日本トラック協会(星野良三会長)も別の助成制度を創設する予定だ。車載器のラインアップがそろい、助成によって普及が進むことで、比較的早期に実勢価格が下がる公算は大きい。 ただ、大口・多頻度割引は今回も16年度限りの継続となっており、17年度以降に関しては現時点で見通せない。割引制度が、単なる機器の普及拡大の手段で終わってはならない。 【写真=国交省は、ETC2.0を活用した料金、整備、運転支援などのサービスを順次スタート】