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相次ぐシャシー火災、非常ブレーキが作動? 進化の一方 リスク増加

物流企業

2015/12/14 0:00

 走行中のトレーラシャシーから突然発火し、積み荷もろとも炎上――。こうした事故が相次いで発生し、運送事業者の間で不安が広がっている。走行中に非常ブレーキが作動し、タイヤを引きずったことが原因とみられる。国土交通省では過去5年間で57件の火災事故を把握しており、関係各方面に確実な保守・管理を呼び掛けている。しかし、この57件以外にも、トレーラがトンネル内で全焼する深刻な事態が発生。シャシーの安全機能進化の一方で、新たなリスクに注意する必要がありそうだ。(吉田英行)  従来のシャシーは、エア漏れが起きると、ブレーキが効かなくなり、暴走する危険があった。そこで、最近のシャシーにはスプリングブレーキチャンバーが取り付けられ、エア漏れを感知した場合、自動的に非常ブレーキが作動するようになっている。  ところが、走行中に何らかの理由でブレーキ系統のエア圧が低下すると、非常ブレーキが掛かり、適切な解除動作をしなければタイヤを引きずってしまい、火災につながる恐れがある。  スプリングチャンバーの不具合については、シャシーメーカー1社が4月16日付で、2000年1月から09年7月までに生産された817型式7455台について、国交省に改善対策を届け出ている。これによると、スプリングチャンバーの交換時期は3年で、これを過ぎるとチャンバー内の劣化によりエア漏れを生じ、走行中に非常ブレーキが掛かる恐れがある。そこでメーカーでは、部品定期交換とエア漏れ時の対処方法について警告ラベルを車両に貼り付け、周知を図った。また、対象車両の駐車ブレーキ操作バルブをブレーキ配管系統のエア圧低下に関与しないものに交換することにした。  対象車種について国交省が把握している火災事故件数は、過去5年で57件(15年10月16日時点)。2月22日、走行中にゴトゴトという異音がした後タイヤがバーストして出火したケースや、3月9日に交差点で停車中にタイヤがバーストして出火した例、30日にも走行中にタイヤから発火した事故が報告されている。国交省自動車局審査・リコール課によると、定期交換部品の交換未実施により車両火災が発生していることを受け、同省では4月30日付で全日本トラック協会(星野良三会長)など自動車使用者団体と地方運輸局に対し、確実な点検整備の実施を周知・啓発するよう指示。地方運輸局では、整備管理者研修などを通じて周知・啓発している。  ただ、改善対策対象車種では、国交省が把握しているもの以外にも、深刻な事態が発生している。  東部ネットワークのトレーラは4月15日、新東名高速道路・新間第二トンネル(静岡県)内を走行中、シャシーから出火。トンネル内で積み荷もろとも全焼した。  トレーラは三重県四日市から埼玉県鴻巣市に向け、飲料自動販売機21台とコーヒーディスペンサー4台を輸送していた。トンネル内を走行中にシャシー右後輪付近から出火。路肩に停車したが、火が回り、シャシーと積み荷は全焼した。この事故で、新東名上り線・藤枝岡部インターチェンジ(IC)―新静岡ICが一時通行止めとなった。幸い人的被害は無かったが、高速道路の、しかもトンネル内での火災は一歩間違えれば大惨事になりかねない。積み荷は全額、東部ネットワークが弁償したが、事故以降、荷主の倉庫会社から輸送の依頼は無くなった。  東部ネットワークは5月29日、車両に欠陥があったとして、メーカーに文書で損害負担を申し入れた。一方、メーカー側は「警察や国交省の実況見分の結果、事故はバルブ内に水やごみがたい積し、駐車ブレーキ解除時の戻り不良が発生したことが原因。改善対策対象の車両だが、今回は事象が違う」と文書で回答し、双方の見解は食い違う。  東部ネットワークの芦原一義社長(71)は「シャシーは事故直前の3月31日に車検を受けており、部品劣化など問題は無かった。当社の事故の翌日にメーカーが改善対策を届け出ていることも納得いかない。訴訟を検討している」と話す。 【写真=積み荷もろとも炎上した東部ネットのトレーラ(4月15日、新東名高速道路・新間第二トンネル内)=東部ネット提供】





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