東ト協練馬支部、実践的な緊急体制構築 対策委設置し区と協議
団体
2015/11/05 0:00
【東京】首都直下型地震など大規模災害発生時に実際に動ける緊急物資輸送体制の構築へ――。東京都トラック協会の練馬支部(佐久間恒好支部長)は、防災対策委員会(植松俊次委員長)を設置し、練馬区と協議を重ねている。2016年3月末までに、区と支部の役割分担、発生時の初動体制を明確化した上で、同区の防災拠点である光が丘体育館と、民間輸送拠点の利活用に関する緊急物資輸送マニュアルを策定する。植松委員長は「実践的な体制を構築するとともに、トラック業界の地位向上にもつなげたい」と強調する。(田中信也) 緊急時体制再構築のきっかけとなったのは、11年に発生した東日本大震災だ。当時、佐久間支部長は全国物流青年経営者中央研修会(現全ト協青年部会)の代表幹事として、被災地へ救援トラックを走らせるなど支援活動に携わっていた。2年ほど前、練馬区の防災計画課に緊急時体制について確認したところ、「これでは実際に災害が起こった時、対応できない」と愕然(がくぜん)とした。練馬区と練馬支部は、1982年に災害時の物資輸送に関する協定を締結している。しかしその内容は、登録した会員事業者の車両を出動することを定めるなどの大まかなもの。指令系統や地域の防災拠点までのオペレーション、更には区と支部の役割もはっきりしておらず、東日本大震災後の緊急物資輸送の考え方に則したものではなかった。 こうした状況に危機感を覚えた佐久間氏は防災計画課に対し、現行の災害時体制の見直しを求めるとともに、防災対策委員会を新たに組織。区と支部の連携による検討を3月から開始した。 防災対策委は、植松氏が委員長、平井政浩、斉藤秀樹の両副支部長を副委員長とし、地区別の9人の班長を委員に構成。なお災害発生時には、委員長と副委員長は災害対策本部となる区庁舎で指揮を執る。 区との協議と並行して、全会員へのアンケートを実施。その結果、40社以上が輸送に協力し、10社程度が自社倉庫などを提供できることを確認した。また、災害時に必要な機器、設備に関する要望を取りまとめている。 協議は10月までに7回にわたり開いた。両者の役割分担や初動体制などについて詰めるとともに、光が丘体育館の施設、道路との接続の状況を確認するため視察を実施。会員の所有する倉庫の利活用に関する検討も行っている。 現在は、検討結果を踏まえたマニュアル(暫定版)の策定という大詰めの作業を迎えている。植松氏は「区は、輸送から荷役までをトラック業界が一貫して取り組むことを求めている。実効性のあるマニュアルをつくり、戦略的なロジスティクスを展開したい」と話す。 また、災害時に不足の恐れが高い燃料に関して、区が緊急車両に優先供給する18カ所の指定サービスステーションで一定量の軽油を優先的に提供することも確認している。 マニュアル策定に合わせ、新たに協定を結ぶ予定。その後は、PDCA(計画―実行―評価―改善)サイクルに基づき、訓練や見直しを継続して実施していく。民間拠点に対しては発電機を貸与することが決まっているが、更に必要な機器や設備の充実に向け、区は17年度予算に事業費を新規計上する方針だ。 【写真=防災対策委のメンバーが光が丘体育館を視察し、施設の状況を確認】