国交省、スクリーニング検査普及 健康事故対策協が初会合
行政
2015/09/28 0:00
国土交通省は17日、事業用自動車健康起因事故対策協議会(酒井一博座長、労働科学研究所所長)を立ち上げ、脳疾患や心疾患、睡眠時無呼吸症候群(SAS)などのスクリーニング検査をトラック、バス、タクシーのドライバーに普及させるための検討をスタートさせた。 事業用自動車の健康起因事故の抑止に効果のある検査機器や検査方法に関する情報を共有し、全国に普及させることを目的に設置。初会合では、国交省自動車局が健康起因による事故状況と健康管理に関する施策の取り組み状況などについて報告した。 事故状況では、2013年に国交省に報告された事業用自動車の全死亡事故件数のうち、車両故障を除いたドライバーに起因する死亡事故数は416件。このうち健康起因による死亡事故は35件、8.4%と、一定の割合を占める。死亡者数(39人)のうち、トラックは19人とほぼ半数に上っている。 健康管理に関する取り組みでは、ドライバーへの健康診断義務付けによる健康状態の把握、疾病のある者の乗務禁止など省令による措置のほか、事業用自動車の健康管理マニュアルの策定・改訂、安全性優良事業所認定(Gマーク)などの認定に当たっての健康管理・把握状況の確認――などを挙げた。 また、健康管理マニュアルでは、スクリーニング検査として①脳ドック②人間ドック③SAS検査④心疾患検査――を推奨していることを紹介。16年度概算要求で新規に1千万円を計上した「健康起因事故防止のための運転者向けスクリーニング検査の普及促進」事業では、最新事例に関する検査方法、事故削減効果の調査や、低コストかつ効果的な検査の実施方法を整理するとともに、運送事業者での取り組みを紹介することなどを明らかにした。 運転従事者脳MRI健診支援機構(水町重範代表理事)の上田守三専務が、脳MRI(磁気共鳴画像装置)検診の意義を説明。脳疾患のうち、「運転中に発症すると最も危険な病気は、くも膜下出血」とし、発症前の予兆は無いものの、「脳MRIを受けることで発見できる」と強調した。 また、帝京大学の大久保孝義医学部主任教授が高血圧を減らすための医学的アプローチ、順天堂大学大学院の谷川武・医学研究科主任教授はSASスクリーニング検査の効果をそれぞれ解説した。 年度末に開催する次回会合では、今会合で明るみになった課題を整理するほか、先進事例に関するヒアリングを行う予定。その後の流れは不確定だが、16年度中に検討成果を取りまとめたい意向だ。(田中信也) 【写真=健康管理に関する施策の取り組み状況などについて報告】