商船三井フェリー、大型フェリーで火災事故 一日も早く正常運航を
物流企業
2015/08/06 0:00
安全運航が「売り」だった長距離フェリー航送で、ついに火災事故が起きてしまった――。4日午前時現在、商船三井フェリー(中井和則社長、東京都港区)所有の大型フェリー「さんふらわあだいせつ」(1万1401総トン)の火災事故は収束していない。トラック事業者の間では「道内ではこれから秋冬の繁忙期に入る。原因究明を急ぐとともに、一日も早く正常運航をお願いしたい」と戸惑いと不安の声が広がっている。(高木明、那須野ゆみ) 同社などが発表した4日午前時までの状況によると、乗員一人の死亡が確認されたが、船体は安定しており、海上への油の流失は確認されていない。今回の火災事故を受け、フェリー各社は関係者らを緊急招集し、安全運航などについて再確認に努めている。 火災は7月31日午後5時15分ごろ、苫小牧港沖の南方約55キロメートル付近の海域で、大洗港(茨城県)から苫小牧港に向けて航海中の「さんふらわあだいせつ」の車両甲板から発生。第1管区海上保安本部(小樽)などによると、3日午前時ごろ、火元の車両甲板で遺体が発見された。船体からは白煙が上がり続けており、火災発生から5日目になっても鎮火は確認されていない。 商船三井フェリーによると、だいせつは大洗港を7月31日午前1時45分、定刻通りに出航しており、苫小牧港には午後7時45分に到着する予定だった。当日、乗員・乗客94人をはじめ、シャシー100台、大型トラック36台、乗用車16台などを積載し、大洗港を出航していた。1日午前、都内の本社で行われた記者会見では「フェリーが積んでいた冷凍機付きトラック付近から出火した可能性がある」としたが、現在、原因は明らかになっていない。 地元北海道のトラック業者などの間では、不安と戸惑いの声が広がっている。シャシー6台を載せていた松岡満運輸(札幌市白石区)は「安全航海に細心の注意を払っているのだろうが(火災事故は)残念でならない。一日も早く正常運航に戻ってほしい」(佐藤孝雄社長)。 また、冷凍車3台を載せていた札幌定温運輸(西区)も「当社では、冷凍機の3カ月点検を実施済みで、異常が発生すれば自動的にストップする仕組みだ。近く、秋冬の繁忙期を迎えるが、フェリーの欠航で物流の混乱も予想される」(伊藤邦博社長)と話す。 一方、八戸港(青森県)苫小牧港のフェリー航路を持つ川崎近海汽船では、社内の関係者らを緊急招集して安全運航を再確認。事故船と近い海域を航海していた大型フェリー「シルバークィーン」とRORO船「北王丸」2隻が救助に向かい、乗客ら40人を苫小牧港まで運んだ。同社では「航海の安全確保を最優先事項とし、今回の事故を契機に、より一層強化していきたい」(船舶部)としている。 【写真=消火活動が続く、大型フェリー「さんふらわあだいせつ」(1日、北海道苫小牧沖)=共同】