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岡山県貨物運送社長 安原晃氏、値上げ効果で増益  人材確保し実運送力向上

物流企業

2015/07/30 0:00

 岡山県貨物運送は2012年4月から運賃値上げ交渉に本格的に取り組み、8割ほどの交渉を終えた。その結果、総売上高の4.5%に相当する値上げ効果があり、15年3月期(連結)は、売上高が404億6500万円(14年3月期比1.1%減)となったものの、営業利益11億4100万円(31.3%増)、経常利益12億100万円(35.4%増)を確保した。運賃値上げは、労働条件改善の原資を獲得するのが大きな狙い。安原晃社長は「今後は、いい人材を確保し、いかに実運送力を高めるかにかかっている」と強調する。  ――前期は増益だった。  値上げ交渉はおおむね順調だが、大手荷主との交渉は厳しい。ただ、人手や車両不足から荷主の間には「運送会社が仕事を引き受けてくれなくなる」との危ぐも広がっている。交渉は今後も継続し、総売上高の5%を確保するのが目標だ。  ここ数年は改善基準告示の順守に積極的に取り組み、長距離の運行回数を減らしてきた。その結果、生産性は低下し、総賃金も下げざるを得ない。従業員の労働条件を改善するには運賃の値上げしかない。  昨年は21年ぶりにベースアップを実施し、今年も継続した。職種や年齢によってベア率は異なるが、若手は20%アップもあり、手厚くした。  ―― 今期の重点目標は。  営業強化だ。渉外力や現場の機動力を高め、生産性アップを目指す。各拠点には入社2、3年の若手営業担当者を配置した。責任者らと共に1日最低2時間は営業に出るように言っている。また、毎月、拠点ごとに渉外会議を開き、本社から指導するとともに議事録を私がチェックしている。  ――輸送品質の更なる向上も重要課題だ。  全事故を含め80PPМ(パーツ・パー・ミリオン、100万を分母にした事故の数)以下にするのが目標だ。当社は評価を受け、同業他社から移ってくるお客さんも多い。労働規制が厳しくなり、大手が扱うのをやめた荷物も増えている。当社は運行便で自車率が高い。外注率が高い集配便も、顧客サービス向上や愛社精神の観点から自社便への切り替えを進めている。物量の動向を見極めながら、今後も自車便を増やしたい。   ――引っ越しや静脈物流にも力を入れる。  平塚営業所(神奈川県平塚市)で下期、総社主管支店(岡山県総社市)では来期をメドに倉庫を新設する計画だ。  16年3月期を最終年度とする3カ年計画を進めてきたが、引っ越し部門だけ目標未達だ。特別積み合わせのネットを強みに、需要の拡大する単身引っ越しや企業移転を取り込む。また、廃家電などの静脈物流に力を入れているほか、サードパーティー・ロジスティクス(3PL)とまでいかなくても、元請け化を進めている。  一方、ドライバー不足から自家用トラックを持つ荷主に外注化の動きがある。当社は既に学校給食の配送を行っており、自営転換のニーズを掘り起こす。また昨年、JRの広島・福岡駅で鉄道利用運送の許可を取得しており、モーダフシフトの需要も開拓していく。 文・写真 江藤和博  やすはら・あきら 1944年10月生まれ。67年明治大学政治経済学部卒業、岡山県貨物運送入社。98年取締役東京主管支店長を経て、2000年常務第一営業部長、07年専務人事・総務部長、13年2月副社長に就任。同年6月から現職。  ◆企業メモ◆ 1943年に岡山県下のトラック事業者79社を統合して設立。50年に通運業、77年にハート宅配便を開始。「地域密着で地元のお客様に貢献する」をモットーに15種類に上るサービスを提供している。2016年3月期は、売上高410億円(前期比1.2%増)、営業利益13億5千万円(18.3%増)、経常利益13億8千万円(14.9%増)を見込む。





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